その朝も愛犬の散歩をさせようと玄関先に出て、抱いていた犬をひょいと地面に降ろした。 なぜその時に限って、降ろしてからリードをつけようと思ったのか。まだ散歩に完全には慣れていない3ヶ月の子犬である。一旦道に出て歩き出すまでは、リードを少し引いて促してやらないと門の外にも出ようとしない状態だったから、自分から勝手に外に出ていくことはないと、油断していたのだと思う。 しかし子犬は地面に脚をつけたと同時に手を摺り抜け、門に向かってダッシュし、仰天した私が追いかけながら「タロ!待て!」と叫ぶ間に門扉の下の隙間を潜り抜けて、狭い歩道から車道に飛び出した。瞬間、交差点から加速して走行してきた車の前輪に子犬の体は激しく当たり、ギャン!と言って転がった。車はスピードを緩めずそのまま走り去った。 制御不能な悪夢が目前に繰り広げられたほんの数秒の出来事。駆け寄って抱き上げると、激痛と恐怖のせいか子犬は信じられな