高校生の一人息子に、大学進学のことで相談をされた。 文学部を受験し、史学科に進みたいと言う。 私は一も二もなく「歴史を精一杯勉強しなさい」と答えた。 しかし事情はいささかややこしいようで、息子の表情は晴れない。 妻が反対しているというのだ。 嫁は息子を法学部へ進ませたいらしい。 理由は「就職に有利だから」だ。 私は腸が煮えくり返るような思いがした。 彼女は大学を就職予備校だと思っている。そして我が子に『一番良いルート』を勧めている。 放任とまではいかないが、普段私は息子にうるさくあれこれ指図したりはしない。 しかしこの一件については明確に自分の考えを伝えた。 学問はそれ自体に価値がある。 就職するための手段でもなければ、モラトリアムを頂戴するための口実でもない。 仕事のことは考えるな。学びたい智慧を修めろ。 息子がスリランカ史を大学院まで勉強しても構わない。 卒業後ポスドクにさえなれず、ゴ