「事件の芽」を未然に摘み取ることはできなかったのか。大阪市北区の心療内科クリニックで2021年12月、院長や患者ら26人が犠牲になった放火殺人事件で、大阪府警は死亡した谷本盛雄容疑者(当時61歳、不起訴)を書類送検し、一連の捜査を終結した。孤立や困窮への絶望から襲撃を計画したとされるその経緯に同情の余地はないが、理不尽な惨劇を繰り返さないためには、悩みを抱えた人に寄り添う「草の根」の取り組みが欠かせないと感じている。 「ある新聞が見つかった」。事件の数日後、捜査関係者からもたらされた情報に息をのんだ。容疑者宅に、36人が死亡した「京都アニメーション」放火殺人事件を報じる紙面が残されていたという。ガソリンが悪用された点で共通し、模倣の疑いが浮かんだ。「大量殺人」と書かれた紙切れも見つかっていた。