「もはや団体交渉を運動の中心に据えないということか」 「そうだ」 「労働組合員だけではなく、働いている人やその家族、つまり人びとすべてに広く門戸を広げる組織になるということか」 「そういうビジョンだ。」 このやりとりは、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)の会長補佐、アナ・アベンダーノ氏へのインタビューのひとこまだ。9月9日から11日にかけてロスアンジェルスで開かれたAFL-CIOの全国大会を控えた8月19日にJILPTの調査の一環として行われたものである。その成果も合わせながら、AFL-CIOの全国大会が示した新しい試みを紹介しよう。 なぜアメリカが示唆になるのか 日本から海外をみると、アメリカほど違った国はないのではないかという気になる。 激しい貧富の差、頻繁に転職を繰り返す働き方、能力重視で成功すれば莫大な報酬が手にできる一方で失敗すればすべて自己責任となる社会、そし