「こら龍驤! またシャブをやっているのか!」 「こら龍驤! またシャブをやっているのか!」 「アカン……シャブがやめられへん……アカン、あかんでぇ……」 龍驤は鎮守府のソファに横たわり、うわごとのようにアカンアカンとくり返していた。顔は真っ赤に上気し、はあはあという荒い呼吸にあわせて、薄っぺらい胸が上下している。 彼女のそばには大きな注射器と、空になったバケツがふたつ転がっていた。 「おい龍驤! 龍驤! 聞いているのか!」 僕が耳も... もっとみる
ご注意: この小説は「南極点のピアピア動画」をオリジナル作品とした二次創作です。本作品に登場する人物・団体はすべてオリジナル作品から着想を得たものであり、実在する名称と類似あるいは一致するものがあったとしてもまったくの偶然かつ無関係ですのでご了承ください。 「ほんとピアピア超会議は成功してよかったねー」 今月のピアンゴ最高経営茶話会で山上会長はご機嫌だった。 「だってさー、新バージョンZeroがあんだけ評判悪くてさー、超会議まで失敗してたら、ピアピア動画自体が世の中から見放されるところだったよ」 運営長が深くうなづいて同意した。 「まったくです。超会議とZeroのリリースをずらしたのは大正解でした。超会議中にZeroがリリースされていたら、超会議の興奮がZeroのショックで一挙に冷めるところでした」 「でも、ショックが当日に来るか、2日後に来るかの違いでしたけど」 広報の儚井美智子(はかな
煙滅 [著]ジョルジュ・ペレック[掲載]2010年2月28日[評者]奥泉光(作家、近畿大学教授)■特定の文字の不在が導く「物語」 これはとんでもない本である。どうとんでもないのかといえば、一九六九年に発表された仏語の原作は、三百頁(ページ)を超える長さがありながら、「e」の文字を一度も使っていないのである! いわゆるリポグラム(文字落とし)というやつなのだが、仏語において「e」は最も出現頻度の高い文字であり、この制約は、日本語でいえば、「い」段の仮名「い、き、し、ち、に、ひ、み、り、ゐ」を、「い」段の音が入っている漢字を含め一回も使わないで書くのと同じくらいの困難をもたらす。とても可能とは思えない。だが、現に、そのとんでもない作品は存在するのだ。そして、本訳書『煙滅』は、右の「い」段抜きの制約を訳文に課すという形で、原作に倍するとんでもなさを素晴らしく実現している。 そんなことをしてなんの
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