Sharun Mukand, Dani Rodrik, “The political economy of liberal democracy” (VOX, 29 September 2015) 世界に存在する民主主義国の数は確かに非民主主義国のそれより多いのだが、こういった民主主義国にしても、単なる選挙競争以上の意味をもっているものは極めて僅かに留まる。本稿では、こういった選挙民主主義と、リベラル民主主義 – すなわち政治的権利と財産権に加えて市民的権利の保障も行う民主主義の謂いである – の間の対照点に光をあてる。リベラル民主主義は、稀な存在である。というのも、マイノリティの権利保障が蔑ろにされるのは民主主義勃興の顛末としてありふれたものだからだ。リベラル民主主義は特に発展途上国では稀有な出来事といえるが、こういった地域においては脱植民地化やアイデンティティ亀裂が社会運動の引き金とな