高校一年生のロシノリは帰ってくるやいなや、LDKへ飛び込んだ。両親は、帰りの遅いロシノリを待たないで、晩御飯を食べ始めていた。 「宇宙が爆発したって本当かよ母さん!」 「ロシノリ、逆だよ。大爆発して宇宙ができたんだよ」 「大…爆発……」 「英語では、ビッグ・バンって言うんだよ」 「嘘だ!」 「本当だよ」 ロシノリは父親を見た。無口な父親はその会話にはまったく興味が無いというように、黙々と箸を進めていた。 「嘘だ」 「本当だよ」 「だって、母さんは大爆発なんて日本語、言ったことないじゃないか。母さんはふざけているんだ。爆発に大をつけて、日本語で遊んでいるんだ」 「ロシノリ」母親は強い口調で言った。「確かに母さん、日頃、大爆発なんて言わない。もう四十五だし。そんじょそこらのもんが爆発したなら……そう、今みたいに爆発って言う。母さんは言うよ。でも、宇宙に限っては、大爆発を選択するよ。母さんは選択