さえぼう先生の『批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く』 (ちくま新書 2021年)で取り上げたい点が一つあって、それは「批評理論とは『社会的条件付け』を暴くものである」ということ。なお返却してしまったので、この文は精確な引用ではない※1。 「条件付け」という言葉は、フェミニズムの論文でも使われるようだが、私は心理学用語を思い出した。条件付けにも古典的条件付け、オペラント条件付け、社会的学習など幾つか類型があるが、どれも「何らかの認知や行動のパターンを習慣的に身に着けること[…てしまうこと]」である点が共通する。 認知や行動のパターン[習慣]には、個人がまわりの状況に上手く対処できるようになる適応的なものと、そうでないものがある。例えば外出するとき、玄関のカギを閉めたか閉めてないかと不安になって、ガチャガチャと何度も確認する。酷い日は、通勤のため途中まで歩いたのに、遅刻を気に