CA1742 – 動向レビュー:ライブラリー・グッズの可能性-ミュージアム、米・英の国立図書館の事例を通して / 渡辺由利子 人文学研究と電子アーカイブ 1. 電子アーカイブプロジェクト 1.1. 人文学研究と資料アクセス 14世紀英国の物語詩『農夫ピアズの夢』(“Piers Plowman”)には3つの稿と十指にあまる写本がある。各バージョンを合わせると60以上の基礎資料が存在し、手稿のページ数は1万にのぼる(1)。 手稿や異稿の研究は人文学に欠かせないが、原資料に直接アクセスしたり、各地に分散する異稿を調べて回ったりするのは容易ではない。そこでこうした資料を整理し、注釈や関連情報とともに提供する学術版、批判校訂版、あるいはファクシミリ版(たとえば「『農夫ピアズの夢』コンコーダンス」や手稿B.15.17ケンブリッジ版)が重要な役割を果たすことになる。 しかし印刷物では、物理的、経済的な