→紀伊國屋ウェブストアで購入 シンガポールのことを、「明るい北朝鮮」と言った人がいる。本書を読めば、その意味がわかる。1965年の独立以来、リー・クアンユーの指導の下、人民行動党が一党独裁を続け、その独裁を批判すれば、国内治安維持法で無期限に収監される。野党も存在するが、選挙区ごとに第1党が議席を総取りするため、野党議員は当選しにくい。 本書は、そのような独裁体制下で「権力に祝福されない大学」として、1955年の開学からわずか25年で幕を閉じた南洋大学(南大)の歴史を辿る。著者、田村慶子は、その歴史をつぎのように要約している。「数では圧倒的に英語派に勝るものの、政治権力から遠かった華語派華人が、英語派との抗争の末に社会の周縁に追いやられていく過程であり、権力の側から見れば、多民族多言語の社会において民族の言語や文化をどのように政治的に管理するのかという政治と言語の葛藤の歴史である」。 シン