【特集・新国家安全保障戦略のリアル(第5回)】 国家安全保障戦略を中心とする安全保障3文書(防衛3文書)は、今後10年間にわたる日本の安全保障・防衛政策の根幹となる。同文書の閣議決定は、日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、防衛関係費を国内総生産(GDP)の2%に達する予算措置を講じ、長射程の「反撃能力」の導入を決定したことなど、日本の戦後史に類例を見ない分水嶺となった。 しかし日本が国家戦略として何を抜本的に変えたのかは自明ではない。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているのは明白だが、単に防衛力の規模と役割を拡張するだけでは、日本の安全を守るための十分な水準に達しているかどうかは、判別できないからだ。 対中劣勢を前提とした戦略環境 あえて論じるならば、今回の3文書で日本が採択したのは「対中劣勢を前提とした拒否戦略・競争戦略」である。これが何を意味するか解説していこう。 日本の安