歴代中国王朝が鋳造した数千億枚に上る銅銭。世界史上極めてユニークなこの小額通貨は、やがて海を越え、日本を含む中世東アジアの政治・経済・社会に大きなインパクトをもたらした。銅銭はなぜ、各国政府の保証なしに商取引の回路を成り立たせてきたのか。貨幣システムの歴史を解明してきた著者が、東アジア貨幣史の謎に迫る。 はじめに――貨幣を選ぶ人々 第一章 渡来銭以前――一二世紀まで 銭の常識 還流しない通貨 原子通貨 溶かされる銅銭 良貨は駆逐されず 一一世紀、硫化銅製錬の革新性 二〇〇〇億枚の古銭 第二章 素材としての銅銭――一二世紀後半以降 布・米遣いの平安日本 過低評価される銅銭 異朝の銭 素材としての中国銭 紙幣に追い出される銅銭 絹の疋から銭の疋へ 元朝の「紙幣本位」制 海を越える銅銭 銅銭を溶かす利益 銭建て取引の普及から定期市へ 素材なのか貨幣なのか 函館志海苔の埋蔵銭 第三章 撰ばれる銅銭