生きていると何かと心が折れそうになる時がある。若いときには実際にポキリと折れたこともあるが、歳をとるにつれて受け流すのも上手になった。柳に風とまでは言わないが、少しはしなやかに生きられるようになってきたような気がする。ストレスに耐え、そこから立ち直る力はレジリエンスと呼ばれている。今回の記事では、このレジリエンスについて考えてみたい。 レジリエンス研究は幅が広い。その対象は人間の心理から自然環境まで多岐にわたる。さらに人間の心理を対象にしたものにも様々な立場がある。レジリエンスを個人の資質と捉えるものもあれば、回復プロセスと捉えるものもあり、その定義も様々だ。本記事では他の脳科学研究に習い、レジリエンスを「ストレッサーと変化する要求に直面して、耐え、回復し、成長する能力(Belcherら、2021年)」と定義して話を進める。ちなみにレジリエンスを評価する尺度としては日本語で使用できるものも