💠邸《やしき》を出たのはずっと朝もおそくなってからだった。 この一行はそれほどたいそうにも見せないふうで出た。 車のこみ合う中へ幾つかの左大臣家の車が続いて出て来たので、 どこへ見物の場所を取ろうかと迷うばかりであった。 貴族の女の乗用らしい車が多くとまっていて、つまらぬ物の少ない所を選んで、 じゃまになる車は皆|除《の》けさせた。 その中に外見は網代車《あじろぐるま》の少し古くなった物にすぎぬが、 御簾の下のとばりの好みもきわめて上品で、 ずっと奥のほうへ寄って乗った人々の服装の優美な色も 童女の上着の汗袗《かざみ》の端の少しずつ洩《も》れて見える様子にも、 わざわざ目立たぬふうにして 貴女《きじょ》の来ていることが思われるような車が二台あった。 「このお車はほかのとは違う。 除《の》けられてよいようなものじゃない」 と言ってその車の者は手を触れさせない。 双方に若い従者があって、 祭