デイヴィッド・クレイ・ラージ著 『ベルリン・オリンピック 1936』 ナチス政権化で行われた1936年のベルリン・オリンピックから聖火リレーが行われるようになったことは有名なエピソードだ。ではその意味についてはどうだろうか。聖火リレーは「間もなく始まる競技に対する関心を高めるだけのものではなかった。それは、ある理念上の非常に重い荷を負っていた」のである。聖火リレーは「南東および中部ヨーロッパに新生ドイツを宣伝するもの」となり、それは「ナチの生存圏〔レーベンスラウム〕」の提唱者が欲しがっていた地域と重なるものだった」。つまり、「その後のあからさまな侵略を予示するものだったのである」。 ナチスはドイツこそが古代ギリシャの後継者だと位置づける民族主義を煽った。「オリンピックの聖火は現代ドイツ国家の純粋さを予示する古代の「純粋さの象徴」だった」とあるように、オリンピックはナチスにとって絶好のプロパ