礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。 ◎乃木将軍と盆踊り 先日、某古書店の百円均一の平台で、清水文弥〈ブンヤ〉著の『郷土史話』(邦光堂、一九二七)という本を見つけた。この「郷土」というのは、野州那須郷のことである。読んでみると、なかなかおもしろい。 本日は、そこから、乃木稀典〈マレスケ〉と盆踊りの関わりについて触れている文章を引いてみたい。 三、盆 踊 明治二十七八年の頃、時の政府は盆踊を野卑のものであるとの理由の下に、全国一斉に禁止した。ところが、此の盆踊なるものは其の元来の主旨なるものが、先祖の供養にあるので、単に野卑であるといふ一理由で之を禁止するといふことは、甚だ当を得ぬといふやうな議論が、さかんに巷間に伝へられ他面その禁止令の如き極めて徹底せぬ風が見へたが、果然その後十年を出でずして、又元の通り禁