私がベッセル・ヴァン・デア・コーク(81)に取材した18世紀創業のホテル「レッド・ライオン・イン」は、非常に落ち着く場所だった。 米マサチューセッツ州の片田舎で、私はこの頑健な精神科医と数時間にわたり語り合い、明確に自分の考えを持つ人物だと悟った。 ヴァン・デア・コークは気候変動の話題に触れながら、いまだに飛行機を使っているのかと私に問い質し、「あんなもの乗るべきではありません!」と一刀両断した。精神科医のフロイトを「ちょっと自己中心的すぎます」と評し、さらにブレグジットについては「あなたたち英国人はとんでもないことをしました!」と歯に衣着せぬ論調だ。 ヴァン・デア・コークは、これまでも常に闘争的な研究者だった。彼は1980年代にベトナム戦争の帰還兵のPTSD(心的外傷ストレス障害)を初めて調査した研究者のひとりだ。 代表作『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法