2006年12月14日21:00 カテゴリ書評/画評/品評 書評 - 渋滞学 遅れながら読了。 渋滞学 西成活裕 前評判が非常に高かった本書だが、それにふさわしい面白さだった。 本書「渋滞学」は、文字通り渋滞学者による、渋滞の、渋滞を考察するための本である。日垣隆はメルマガで「今年最高の一冊です」と絶賛している。私より本を読んでいる人にしてここまで言わしめる「渋滞学」とはいったいなんだろうか。 目次(http://www.shinchosha.co.jp/book/603570/より編集) まえがき 第1章 渋滞とは何か 水と人のちがい / 非ニュートン粒子なるもの / おもちゃモデルの重要性 / ASEPは優れたモデル / ASEPで遊んでみよう / 水が氷になる時 / 待ち時間の計算方法 / 待ち行列の理論と渋滞学のちがい / セルオートマトン法 第2章 車の渋滞はなぜ起きるのか ET
・アブダクション―仮説と発見の論理 これは絶賛すべき素晴らしい本である。人間の創造的能力、ひらめきの正体をずばり言い当てている。本当におすすめ。記号学で知られる偉大な論理学者・科学哲学者チャールズ・パース(1839~1914)の思想を一般向けにわかりやすく説明している。 アインシュタインは「経験をいくら集めても理論は生まれない」と言った。観察によってデータをいくらたくさん集めても、既存の理論の検証が進むだけである。帰納法からは斬新な新理論、イノベーションは生まれない。論証を行うのみである演繹法からも無論、新しい理論は出てこない。 パースは人間の推論には演繹と推論とアブダクションの3つの形式があるのだと指摘した。 アブダクションとは、 驚くべき事実Cが観察される しかしもしHが真であれば、Cは当然の事柄であろう、 よって、Hが真であると考えるべき理由がある。 という推論形式である。 説明すべ
道徳やしつけの根拠を自然科学に求めるべきではない 道徳やしつけの根拠は自然科学にある ある意味、どちらも正しいけれど、どちらも正しくないといえます。 科学は、人間がある価値観に基づいて行動する際の「道しるべ」となり得ます。 すなわち、「どこに行くのか」「目的地」*1を決めるのは飽くまで人間だということです。科学は目的地の定められていない「世界地図」なのです。世界地図に「目的地」という地名はありません。どこに行くかは旅行者の決めることです。 そして、科学者とは「地図職人」を意味します。 倫理や道徳について語るということは、「目的地」をどこにするか、という話です。もちろん地図職人たる科学者もそれについて語ることはできます。道や地理には詳しいので、大変役に立つでしょう。ただし、「この道が早いよ」とか「この町はこんなとこだよ」ということに関しては優れていても*2、「ここを最終目的地にすべきだ」とい
2010年12月22日09:00 カテゴリ書評/画評/品評SciTech エネルギーも脱一人勝ちで - 書評 - マグネシウム文明論 共著者の山路様より献本御礼。 マグネシウム文明論 矢部孝 / 山路達也 初出2009.12.16; 英語版を追記 まぎれもないスゴ本。内容、構成、そしてタイミング。今年出た新書ナンバーワン。 正直私は本書の内容を100%信じられるわけではない。しかしその内容の1/10でも実現できれば、世界はずっとよい場所になる。「エネルギーがパケホーダイになる日」が、これでまた近づくのだから。 本書「マグネシウム文明論」は、マグネシウムで文明を駆動することが可能であることを主張した一冊。 12月16日『マグネシウム文明論』がPHP新書より発売されます - The Magnesium Civilization 石油の次のエネルギー資源は何か? 太陽電池で日本のエネルギーを賄お
2009年10月13日20:30 カテゴリ書評/画評/品評SciTech 満漢全席 - 書評 - カラー図解でわかるブラックホール宇宙 これを書評しそびれていたことを思い出した。 カラー図解でわかる ブラックホール宇宙 福江純 これ、間違いなく、一般書専門書を問わず、ブラックホールについて書かれた書籍の中で最も包括的な一冊。満漢全席、まさにブラックホール三昧。 ブラックホールで核攻撃!? 天才物理学博士、緊急逮捕で衝撃自白中 : Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン), ガジェット情報満載ブログ もしや人工ブラックホールなんて作り出し、異次元の発見なんてできちゃったら、トンでもない手段で悪用されちゃったりとかしませんかね... 安心していい。本書を読めば、そういうブラックホールが仮に出来たとしても、悪用できるような代物でないことがすぐにわかるから。 本書「カラー図解でわかるブラ
2007年01月10日21:30 カテゴリ 書評 - 「退化」の進化学 「 人体 失敗の進化史」の遠藤節が苦手な人でも、本書ならいけるかも知れない。 「退化」の進化学 犬塚則久 本書、「「退化」の進化学」は、「人体 失敗の進化史」と同じく、ヒト(H. Sapiens Sapiens)の「退化」のありようを解説した一冊。ただし、目次を見ればわかるとおり、その趣は大いに異なる。 目次 第1章 「退化」の進化学 第2章 上陸して―四億年前から 第3章 哺乳類から―二億年前から 第4章 サルとなって―七〇〇〇万年前から 第5章 類人猿より―三〇〇〇万年前から 第6章 木からおりて―七〇〇万年前から 第7章 ヒトになる―二五〇万年前から 第8章 男と女のはざま―誕生前から 終章 まとめにかえて 「人体 失敗の進化史」においては、「失敗」という言葉からもわかるとおり、著者の「進化史観」が多いに反映され
2009年09月22日05:30 カテゴリ書評/画評/品評SciTech 不自由意思の源 - 書評 - つぎはぎだらけの脳と心 インターシフトより献本御礼。 つぎはぎだらけの脳と心 David J. Linden / 夏目 大訳 [原著:The Accidental Mind] 「プルーストとイカ」、「脳の中の身体地図」に続く同社の「脳シリーズ」三作目は、「単純な脳、複雑な「私」」の池谷裕二をして、「同業者として"ネ神様"のような存在」と言わしめる著者による。 脳科学の本を通読している人には驚きは少ないかも知れないが、それだけに本書は脳科学の本として最良のまとめになっている。むしろ脳科学の本をほとんど読んでいない人がうらやましい。いきなり本書から始められるのだから。 本書「つぎはぎだらけの脳と心」の原題は、"The Accidental Mind"。表題どおり、脳と心がいかに Accide
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く