徹底的に「政治的なマンガ」 「別冊少年マガジン」2009年10月号から連載がはじまり、巨大なブームを巻き起こしてきた諌山創(いさやま・はじめ)『進撃の巨人』が、先頃、ついに同誌2021年5月号で完結した。最終34巻は6月9日刊行。あらためて全体を読み返してみると、2010年代の殺伐とした社会的・政治的なリアリティを、『進撃の巨人』がきわめてアクチュアルに描ききっていた、という事実に驚かされる。 『進撃の巨人』は、徹底的に政治的なマンガだったと言える。政治的といっても、日本の政党政治や社会問題をそのまま描写している、ということでは当然ない。現代社会における「政治的なもの」の国際的な動向の核心を直観的につかみ、それを物語の中心に深く埋め込んでいた、という意味である。それは稀有なことだった。 香港生まれで地域文化研究を専門とする銭俊華【ちん・ちゅんわ】の『香港と日本――記憶・表象・アイデンティテ