この展開はプロの脚本家が観たら、ドラマがないと指摘するかもしれません。でもこの映画は端からドラマツルギーをあえて無視して作っているところに新しさがあります。それは高校生活、さらには吹奏楽部という2度とないであろう時間全てを肯定するという意思です。本作では青春という時間のかけがえなさをドラマではなく空気感で描いているんです。 作品の中にスマートフォンで撮った映像が出てきます。あえて縦型の映像で画質を落とし、音はモノラルでノイズも聞こえるという、アニメーションでありながら現実に近づけた演出がされています。そこでは登場人物たちが自己紹介をしているカットを入れているのですが、物語の流れとは違う時間軸の映像が挿入されることで、この映画に俯瞰をするかのような視点が加わっていました。まるで作品全体を思い出として振り返るかのような。そして、その何気ないスマホに残っていたであろう映像が、先にも書いた「かけが