大学病院の手術は研修医が見守るなかで行われることが多い 「研修医は叱らないでください」 ある日の朝、某病院の麻酔科部長のA先生が私に釘を刺した。これから始まる手術の麻酔を研修医が担当するのだ。私はそのサポート役である。 「それから、研修医の担当する手術が17時以降に及んだ場合、本人が帰宅を希望したら交代してください。厚労省のガイドラインで決められているので」 かつて、研修医は出身大学で各専門科の研修を受けるのが慣習だった。だが2004年、厚労省が定めた新医師臨床研修制度によって、新人医師は2年間で「外科2カ月→小児科2カ月→麻酔科1カ月……」式にいろいろな科を廻り、幅広い分野の総合的な能力を養うことになった。 それにより大学病院に長年存在した医局制度は衰退した。新人医師が「幅広い分野の総合的能力を養う」ことは悪いとは思わないが、新制度の影響が医師不足・医療崩壊(※)という形で表面化したのは