「全集中!ヒノカミ神楽の呼吸!」 強風に飛ばされまいと必死に傘の握りを掴んだ時、私の心の中で確かにその声が聞こえた。 頼りない折りたたみ傘は、DX日輪刀ヒノカミカグラの呼吸バージョンとなり、私の握力に答えるように刀身を赤く輝かせていた。 いつからか、アバンストラッシュを、九頭龍閃を、俺自身が斬月になることをしなくなった。 その日、久しぶりの強い雨風の中、私の握る物が柄であり、握る手のひらに懇親の握力が込められた時、私は確かに呼吸の剣士であった。 全力の握り込みだけが困難を打ち破るための武器となる、そんな現実を前にして、私は再び剣士となった。 子供心ではなく、永遠にそれはそこにあったのだ。 剣士としての己は。 永久不滅の刃が、鞘に収まったまま、心の中に今も眠っていた。