メダルも大いに期待されたスポーツクライミング女子複合で波紋を呼んだあるシーン。決勝進出選手中で最も背が低い森秋彩が、高く設定された最初のホールドをなかなかつかめなかったのだ。試合以前の問題では、という声もあがったが、森本人はあくまでも毅然と……。
メダルも大いに期待されたスポーツクライミング女子複合で波紋を呼んだあるシーン。決勝進出選手中で最も背が低い森秋彩が、高く設定された最初のホールドをなかなかつかめなかったのだ。試合以前の問題では、という声もあがったが、森本人はあくまでも毅然と……。
「野球をやっていたことを知らない人が9割なので」 まだ桜がつぼみのまま閉じこもろうとしていた3月中旬、神戸の生田神社の近くにあるカフェで、ある翻訳家と話す機会があった。じっくりと向き合うのは久しぶりだった。あの頃をどのように過ごし、いまをどのように生きているのか……。彼と別れてから、ボイスレコーダーを聞き直した。ふと脳裏をよぎったのは、かつて読んだ本の一節だった。 《人間はひとりひとりがそれぞれじぶんの時間をもっている。そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、生きた時間でいられるのだよ。》(ミヒャエル・エンデ『モモ』岩波少年文庫、大島かおり訳) 翻訳家の朝は早い。彼とLINEでやり取りする時、メッセージが届くのはいつも午前4時である。海外と業務の打ち合わせをするために早起きするのだという。世の中が寝静まっている夜明け前に動きだすようになってから、ずいぶんの時が経つが、この
あんなに運がない棋士も珍しい ほとんど偶然の要素がないと思われている将棋にも、運というものがあります。例えば、先後を決める振り駒は完全に偶然的なものです。また、プロ制度の中で、昇級、降級枠の増減なども運といえるでしょう。 それでいえば、藤井はあまり運がよくない棋士です。あんなに運がない棋士も珍しいと思うほどです。 まず一つ、将棋は先手番が有利とされます。藤井もとくに先手番において圧倒的な勝率を誇りますが、振り駒に運がなく、過去においては、後手番を引きやすかった(2018年度:先手番12局、後手番30局)。また、13歳2カ月で奨励会三段に昇段した藤井ですが、昇段タイミングが悪く、三段リーグ戦への参加には半年も待たされることになりました。結果的には一期で三段リーグを抜け、史上最年少でのプロ入りを果たしていますが、この不運がなければ、最年少記録は14歳でなく、半年早い13歳だったかもしれません。
2020年に史上最年少でタイトル(棋聖)を獲得してから次々と他の冠も手中にしていった藤井。師匠が語る集中力の真髄とは おそらく藤井の中では、どうしたら勝てるのかは以前からわかっていたと思います。適当なところで見切って指していけば勝率は上がるだろうということや、相手はそこまで読んでいないだろうということも。しかし、勝利を最優先にした考えが、自分の将棋を強くするためにならないと考えていたのでしょう。 簡単にいえば、これまでの藤井は、妥協しないがゆえに時間を使いすぎて、そこにつけ込まれていたのだと思います。
2020年に史上最年少でタイトル(棋聖)を獲得してから次々と他の冠も手中にしていった藤井。師匠が語る集中力の真髄とは もう一つ、集中力が明確に発揮される場面に「長考」があります。多くの棋士は一局において迷っている状態で、リスク回避のため、先を読むために長考します。 長考には、いい長考と悪い長考があります。次の手に何を指せばよいか迷走している状態は、悪い長考です。いい長考は、その局面に入り込んでとことん先を読んでいる状態です。藤井はよく長考することで知られますが、本当に時間を惜しみなく使います。どこまでも深く考えるその姿は、思考の沼に入り込むことを自ら好んでいるように感じさせます。
こんなこともありました。 羽生善治王位と木村一基(かずき)八段(現九段)の伊藤園お~いお茶杯第五七期王位戦を、私と当時三段でプロ入り前の藤井、そして同年代の奨励会員で検討していた時のことです。 はっきりと木村八段が有利になった局面にさしかかり、安全策を取ればもうそのまま終わるのではないか、という場面でした。 私も含めてほとんどの棋士は、検討を打ち切っていました。 でも、藤井だけは違いました。ただ一人、攻め合いでの最短の勝ちをひたすら研究していたのです。 正直、無駄な研究ともいえます。実戦がそう進むわけはありません。受けの得意な木村八段ならずとも、10人いたら全員が受けに回る局面です。 他人の将棋でも自分のことのように向き合う 「そんな場面は一回守っておけば、もっと楽に勝てるんじゃないか」 同年代の奨励会員が、何気なくこのような言葉を発した時です。この意味は、持ち駒含めて盤上の駒に戦力差があ
10月11日の王座戦第4局を勝利し、将棋界の八大タイトル全てを手に入れ、「八冠王」となった藤井聡太。その飽くなき将棋への探究心の一端を示すエピソードを師匠・杉本昌隆の著書『藤井聡太は、こう考える』(PHP研究所)より抜粋して紹介する。(全3回の1回目/#2、#3へ) 藤井にとってはリスクを恐れることが、最大のリスク 肉を切らせて骨を断つとでもいえる、リスクを恐れない戦略と、それを下支えする藤井の構想力を象徴する対局があります。藤井にとってはリスクを恐れることが、最大のリスクなのでしょう。 14歳でデビューして最初の、C級2組順位戦での出来事です。二回戦中田功(いさお)八段(当時七段)、四回戦佐藤慎一五段との対局で、藤井は自ら崖っぷちを歩くかのような局面をつくり出し、完璧に読み切って勝利したのでした。自分の玉を「打ち歩詰め」(あと一手で相手の玉が詰む形で、持ち駒の歩を打って詰ませること。禁じ
10月11日の王座戦第4局を勝利し、将棋界の八大タイトル全てを手に入れ、「八冠王」となった藤井聡太。将棋への比類なき集中力の一端を示すエピソードを師匠・杉本昌隆の著書『藤井聡太は、こう考える』(PHP研究所)より抜粋して紹介する。(全3回の2回目/#1、#3へ) 練習中にも発揮する集中力 集中力には、練習の集中力と本番の集中力があります。 本番で藤井は、純粋な視点で能力を発揮して、名人位を獲得したことは序章で述べました。藤井は、練習中にも当然のように集中力を発揮します。棋士にとっての練習とは、仲間との研究会もその一つですが、藤井は携帯電話をまったく見ません。 本番ではなく研究会なので、奨励会員でも棋士でも当たり前のように手元に置いている人は多いです。しかし、藤井は朝、家を出て、お昼休みも携帯はずっとカバンに入れたままです。手元に置いておきません。
今年の春あたりから地方大会などで増え始めた、大流行中の応援「盛り上がりが足りない」。「も! 盛り! 盛りあ! 盛り上がりが足りない!」とコールする応援で、西東京大会で初めて聞いた時は、最初何と言っているのかわからなかった。「変わったコールだな」「誰に向かって言っているんだろう」くらいに思っていたが、瞬く間にスタンドを席巻。開催中の甲子園で、全49校の応援を取材したところ、実に32校もの学校が取り入れており、毎日どこかの応援席からこのコールが響いている。 採用・不採用の「理由」 SNSやYouTubeでさまざまな応援が簡単にコピー出来る時代だけに、正確な起源ははっきりしないが、茨城の明秀日立高校サッカー部の応援がTikTokで拡散され、全国に広まったのは間違いない。アルプススタンドで取材した野球部に「この応援を何で知ったのか」と聞くと、100%TikTok。「明秀日立サッカー部のを見た」とい
野球 高校野球 「練習1日50分、月曜日は完休、部員は全員元投手」…で甲子園って行ける? 人気漫画家が取材で感じた「高校野球、練習“量”と“質”どっちが大事か」問題
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世界最高峰の舞台で、鮮烈なデビューを飾った1年。前人未到の境地へ駆け抜けるこの目には、今、一体どんな景色が見えているのか――。プレミアから日本代表まで、三笘薫がその全てを語った。 現在発売中のNumber1075号掲載の[ロングインタビュー]三笘薫「僕はもっと進化できる」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文は「NumberPREMIER」にてお読みいただけます】 「もちろん僕も自分の感覚を大事にしていますし、最終的には信じます。でも、それが合っていないのに信じていたらバカじゃないですか。自分がいい動きをしたとしても、他の人にはそう見えないときもある。自分では速いと思ったけど、本当は速くないときもある。だから僕はあらゆる手段を使って自分の主観が正しいかを確かめたいんです」 実力でも人気でも日本サッカー界の顔に 三笘にとって2022-'23シーズンは、新たな扉を開く1年になった。 初
日本のテレビはWBC一色。このまま、3月30日からのレギュラーシーズンに突入しそうな勢い。 そこで気になるのが、敗れたアメリカの論調。きっと、野球の母国というプライドはどこかにあったはずだから、2位という結果をどう受け止めているのか、と気になったのである。 まずはニューヨークタイムズから。なんと大谷絶賛の嵐だった。 「オオタニのユニフォームは土にまみれていた」 【ニューヨークタイムズ タイラー・ケプナー記者 “Baseball’s Unicorn Made the W.B.C. ‘Real’”】 9回表、クローザーとしてマウンドに立った大谷のことをケプナー記者はこう描写した。 「身長6フィート4インチ、筋骨隆々のクローザーがマウンドに上がったが、他のクローザーとは一線を画していた。すでにユニフォームは土にまみれていた。大谷翔平はすでに4回打席に立ち、そしてマウンドへと向かったのだ。 これ
相撲、どこに行ったら見られるの? 屋根のある球場だけでなく、選手たちのほとんどは日本に来ること自体が初めて。だからこそ目にするものすべてが新鮮だった。ジーマはうれしそうにこう続けた。 「日本の文化も食べ物も気に入ったよ。スシに、ラーメン。何ていう名前だっけな、あのラーメンは……。とにかく辛くておいしかった。日本の文化や伝統もいいね。お寺とか、細かいディテールにこだわるところとか」 ディテールとは? 「例えばレストランで、箸の置き方とかもてなしの仕方とか。何でもきちんとした決まり、約束事がある。(土俵に上がってから儀式がある)相撲もそうだよね。実はすごく相撲を見に行きたいと思っているんだ。どこに行ったら見られるの? 連れていってほしい」 そう言って人懐っこそうな笑みを浮かべた。 チームの大黒柱は「本業・消防士」 チェコ代表は、昨秋にドイツで行われた予選A組(ヨーロッパ・アフリカのチームが出場
球春到来とばかりにMLBのキャンプが始まった2日後、通算197勝の大物左腕クレイトン・カーショー投手(ドジャース)が、WBCアメリカ代表を辞退することが決まった。出場を心待ちにしていた左腕の辞退の理由は、怪我ではない。出場にあたって、保険会社が保険のカバーを認めなかったためだ。カーショーは「苛立つ。出たい選手がもっと出やすいようにすべきだ」と言葉を残した。 ロサンゼルス・タイムスの名物記者で、日本野球にも精通しているコラムニストのディラン・ヘルナンデス氏は、同紙で「書類の手続きでスター選手が出場を禁じられるなら、WBCは(サッカーの)ワールドカップになれない」というタイトルのコラムを掲載した。カーショーに直接取材し、WBCについて考察するヘルナンデス氏に、アメリカ本土のWBCに対する温度感や、今回のアメリカ代表に有力選手が集まった背景、保険の問題などを聞いた。 米国記者の嘆き「大会に値段を
当事者たちにしか知り得ぬ世界がある。中終盤の形勢不利を覆す、羽生善治にしか指せない絶妙手――“羽生マジック”という棋界の奇怪は、対局者の目にどう映っていたのか。 プロ35年目。53歳となったベテランの中川大輔には、羽生と盤を挟んだ伝説の一局がある。2007年、第57回NHK杯2回戦だ。 加藤一二三の「迷」調子を生んだ、まさかの頓死 中盤から形勢は中川に傾き、慎重に手を進めながら敵玉を追い詰めていく。勝利は目前。解説者の加藤一二三が終局を待たずに羽生の敗因を語り出すほどだった。 ところが、だ。羽生の指し手を見た加藤がしばしの沈黙の後、にわかに慌てふためく。▲2二銀――。 「あれ? 待てよ、あれ? おかしいですね。あれ、もしかして頓死? ひぇ~! これ、頓死かもしれません。なんと……。銀桂に歩が3つあって、ぴったり間に合いますから。これは大逆転ですね」 思わず吹き出しそうになる「迷」調子。ただ
強豪スペインに2-1で逆転勝利を果たし、世界に衝撃を与えたサッカー日本代表。その逆転劇で話題となったのが三笘薫のライン上ギリギリのアシスト写真だ。ボールの表面わずか1ミリほどが線上に残っていた瞬間を示すこの1枚。日本のメディアでも多く使われたこの“証拠写真”を撮影したのがAP通信のフォトグラファー、ペトル・ダビド・ヨセクさんだ。開会式翌日の11月21日に43歳となったチェコ出身のヨセクさんに「あの瞬間をどのように撮ったか」を聞いた。 試合を象徴するようなシーンを捉えることができたのかな ――ライン上に残っていたか世界的にも議論となったプレーについて、ヨセクさんの写真は、その決定的瞬間を捉えており、日本でもとても話題となっています。率直にどう感じていますか? ヨセク 多くの人に注目いただいていて、光栄に思います。あの瞬間をしっかり写真に収めることができて、幸せに感じますね。あの写真があったか
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