ブックマーク / somethingorange.jp (26)

  • どうすれば人類は戦争を克服できるのか? 空想的な平和主義が戦乱をもたらす。 - Something Orange

    「暴力」について考えてみたい。 というのも、幸村誠の歴史冒険マンガ『ヴィンランド・サガ』がクライマックスに到達しているからだ。 ヴィンランド・サガ(27) (アフタヌーンコミックス) 作者:幸村誠 講談社 Amazon 戦争を嫌い、平和を求めるこの物語の主人公トルフィンの物語はかつて夢見た理想の地「ヴィンランド(アメリカ大陸)」に到達し、そこで小さな村を作り出すに至っている。 しかし、しだいにそこにも戦乱の影が忍び寄ってくる。はたしてすべての暴力を否定するトルフィンたちは戦争を止めることができるのか――と、考えるだけで胃が痛くなるような展開が続いているのである。 それではなぜ胃が痛くなるかといえば、そもそも「すべての暴力を否定する」ことはどうにも不可能なのではないかと思えるからにほかならない。 たしかに、暴力は悪だろう。殊に弱者に対する暴力は絶対に否定されるべきものでもあるだろう。 しかし

    どうすれば人類は戦争を克服できるのか? 空想的な平和主義が戦乱をもたらす。 - Something Orange
  • インターネットが人生を腐らせる。 - Something Orange

    先日の『情熱大陸』の一場面が話題になっている。 このテレビ番組は毎回、各界の著名人の「情熱的な」人生のひとコマを切り取って見せてくれるのだが、前回、取り上げられたのは人気テレビゲーム『ファイナルファンタジー16』の開発者・吉田直樹だった。 FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16) - PS5 スクウェア・エニックス Amazon 話題になったのは、吉田が『FF16』の開発途中でかれ個人に対する誹謗中傷を確認している場面だ。 「見たことも会ったことも話したこともない人たちから罵声を浴びつづけているんですよ」とかれはいう。 そして、そういった「罵声」や「中傷」の大半は日からのものだというナレーションが入る。 これに関連して、日のインターネットでの誹謗中傷の激しさについてさまざまな議論が巻き起こった。 日の誹謗中傷はひどすぎるとか、いや、海外のほうがもっとひどいとか

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  • もし、ヒトラーが濡れた子犬を拾っていたら。 - Something Orange

    話題の一冊『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』を読んでいる。 検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット) 作者:小野寺 拓也,田野 大輔 岩波書店 Amazon 「ナチスは「良いこと」もした」という俗論を専門家の視点から批判的に検証したで、とても面白いし、勉強になる。 書では「ナチスは「良いこと」もした」という一種のまぜっかえし的な理屈が取り上げられ、それが歴史学的には端的に「まちがい」といってしまえることを詳細に検証していく。 そうはいってもナチスも「良いこと」もしているのではないかと漠然と考えているような人にとっては刺激的な内容といえるだろう。 歴史一般やいわゆる「歴史修正主義(リヴィジョニズム)」について知りたい方には文句なしにオススメできる一冊だ。 もっとも、「文句なし」というのは少し過言であるかもしれない。 ぼくはナチスやドイツ史について何ら専門的な知

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  • 実存主義文学としての『無職転生』、公正世界信念としての「ざまぁ」小説

    テレビアニメ『無職転生』の第二期を見ている。 第一期はハイレベルの作画と何とも「わかっている」演出で「小説家になろう」発の異世界転生もののなかでも傑作と名高かったが、この第二期も面白い。 いや、フィッツ先輩、最初から正体を明かしてしまうのね。まあ、原作でもバレバレだったけれど……。 第0話 守護術師フィッツ 内山夕実 Amazon とにかくいわゆる「なろうアニメ」のなかでは出色の出来なので、原作を読んでおられない方もぜひ見てみてほしい。オススメ。 原作もマンガも読んでいるので一応は筋立てを知っているのだが、それにしても不思議なストーリーだよなあと思うのだ。 長いあいだ「なろう」でランキングトップを維持していたくらいで面白いことはまちがいないのだが、この作品の魅力がどこにあるのか、明確に言語化することはむずかしい。 ただ、何といっても興味深いのは主人公であるルーデウスのキャラクターだろう。ル

    実存主義文学としての『無職転生』、公正世界信念としての「ざまぁ」小説
  • なぜ、ただのアニメやゲームが人を救うのか、宗教的に説明するよ。 - Something Orange

    ①「オタク文化と宗教のアフィニティ(親和性)」 たとえば、そう、何気なく眺めていた報道番組で、何の罪もない子供が亡くなる事件が放送されていたとき。ふと、何ともいえず哀しく、薄ら寒い気持ちにならないでしょうか。 その子は大人から虐待を受けていたのかもしれませんし、純粋に不幸な事故で落命しただけかもしれません。いずれにしろ、かれ/彼女は、一見して平和で安全なこの社会に開いた「虚無の穴」へ墜落してしまったのです。 「虚無」は社会の至るところに穴を開けています。そのとき、あなたも、その報道を通しその深淵をほんの少しのぞき込んだといって良いでしょう。 戦慄の体験。 とはいえ、あなたはあまり長い間その記憶を引きずらないに違いありません。その出来事はきわめて痛ましいけれど、あくまで見知らぬ子供のことに過ぎませんし、いつまでも気にかけるには人生はあまりに忙しないこともたしか。ひとまずは、そういえるでしょう

    なぜ、ただのアニメやゲームが人を救うのか、宗教的に説明するよ。 - Something Orange
  • あだち充『タッチ』を精読する。浅倉南はほんとうは何を考えていたのか。

    浅倉南の話をしたい。 もちろん、あだち充の傑作漫画『タッチ』のヒロインである「南ちゃん」のことである。 タッチ 完全復刻版(1) (少年サンデーコミックス) 作者:あだち充 小学館 Amazon 彼女が少年漫画史上に残る重要なキャラクターであることはあきらかだが、それにしてはその評価は個人個人で分かれる。 もちろん、だれからも愛される万人向けのヒロインなど存在しようもないわけだが、浅倉南の人気とうらはらの悪評は強く印象に残る。 なぜ、南はこれほどまでに嫌われるのか。ぼくにはそれはそもそも彼女が何を考え、何を思い行動していたか広く理解されていないからだと思えてならない。 当然、作中にはっきりと南の心理が書かれていない以上、すべては解釈の問題でしかなく、自分の考え方が「正しい」などと主張することはできない。 しかし、いままで浅倉南について、さらには『タッチ』という作品について伝統的になされてき

    あだち充『タッチ』を精読する。浅倉南はほんとうは何を考えていたのか。