便所の歴史というのは、どうも、ひどく断続的であるらしい。というのは、考古学の知見は、紀元前2200年ころ、シュメールのテル・アスマルで、すでにかなり発達した水洗式腰かけ便器が使用されていたらしいことを教えてくれる。 また、旧約聖書によると、モアブ人の王エグロンは、イスラエル人をいじめたために、刺客エホデによって暗殺されたが、それがどうやら便所の中で、その便所はやはり腰掛け式であったらしい(『士師記』第3章)。 しかし、こうした利器が、ギリシア時代に引き継がれた形跡はないし、まして、それが庶民のウンチング・スタイルを向上させたという形跡は、つゆほどもない。庶民は、ただ、したいところにしゃがみこんで、用を足していたものと思われるし、それはギリシア時代においても同様であったはずである。 唐突ながら、ウンコのことを古代ギリシア語で"kopros"という。これは家畜のウンコと人間のウンコとを区別しな