奈良市の奈良国立博物館で開催中の御即位二十年記念「第61回正倉院展」(特別協力・読売新聞社、12日まで)で展示されている「漆柄香炉箱(うるしのえごうろばこ)」のふたに、「●」という文字が刻まれている。どう解読すればいいのか、研究者の意見も定まっていない。(●は衣ヘンに「勿」) 「漆柄香炉箱」は、併せて展示している「白銅柄香炉」を収納する箱で、縦約34センチ、横約12センチ、高さ9センチ。黒漆を塗った箱のふたの表に「● 神亀六年(729年)七月六日」との銘がある。針で引っかいて刻んだためか、字形に乱れがある。 「●」の文字は、長く正倉院事務所に勤めた松嶋順正・元同事務所保存課長が「初」と解読。「初」ならば、法会で初めに用いる柄香炉などの解釈が可能だが、その後、同事務所は見たままの「●」に改めた。だが、これでは意味も不明。同博物館学芸部の清水健研究員は「解読されれば製作の経緯などが分かるかもし