トーキョーシティで働く一般社員の春部ダンは腹をすかせていた。時刻はちょうど正午、今から一時間は雇用の免除時間であるので、どこか適当なタベモノ店で食事をとりたいところだ。ダンは労働部署を出て、タベモノ店地区に向かった。冬の寒さが身にしみる。こういう時は、暖かいカレーうどんでも食べたいものだ。カレーうどんは一般社員のタベモノとしてふわさしい。 ダンは会社から発行された食事許可カードがポケットに入っていることを確認しつつ、ぶらりとタベモノ店地区へ向かった。この食事許可カードがなければ、食事にはありつけないのだ。カードには非接触ICが搭載されており、ダンが食事の権利を持つ者であるという身分証明もかねているのだ。 ダンには、というより、ほとんどの一般社員には、行きつけのタベモノ店などというものはない。一般社員が利用できるタベモノ店は数社の企業による寡占フランチャイズで、どの店で食べてもちゃんと綿密に