読み応えのある本だ。新書版で上下600ページ近く。それもやさしい本ではない。しかし、『科学を楽しみ、神経系がどのようにして学習し、記憶するかについての驚くべき新発見に興味を持つ一般読者』を想定して書かれたというこの本のもくろみは十分に達成されている。 専門用語がたくさん出てくるので、本屋さんでこの本をぱらぱらっと見たら、それだけで尻込みしてしまうかもしれない。しかし、内容がステップワイズに説明されていくので、最初から読んでいけば、生命科学についての知識がなくとも大丈夫だ。最後まで読めば、記憶について最先端の神経科学が理解でき、おおいなる知的満足感にひたることができる。 記憶の研究は、哲学にはじまり、心理学から生命科学へと移ってきた。しかし、ひとことで『記憶』といっても、何種類もに分けることができる。そのことは、カナダの心理学者ブレンダ・ミルナーによる、ひとりの健忘症患者、世界でいちばん有名
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