「アシッドジャズ」と名付けられたシーンが生まれるまで 1992年の秋に『When You Gonna Learn』でJamiroquaiがデビューした時のインパクトを正確に伝えるのは、なかなか難しい。当時毎晩のようにクラブで遊んでいたような人間にとって、彼らの音楽とその存在感はあまりにも「異物」であり、その「異物」感によって誰もが夢中にならずにはいられない強烈な磁力を発していた。 80年代末に英国の音楽シーン全体を覆ったアシッドハウスと呼ばれるダンスミュージックのムーブメントの肝は、「スターの否定」と「メッセージの否定」にあった。アンダーグラウンドのシーンからは、誰がやっているのか顔さえわからないインストゥルメンタル主体の匿名的なブレイクビーツテクノやハウスミュージックが次々と生まれ、毎月のようにクラブのダンスフロアで新たなトレンドを作っていた。その一方で、以前から英国のDJの間で起こって