年をとっても夜更かしは深まるばかり 悟りからは遠のくばかり 分からないこと増すばかり 「老人とは」の通念はまちがいばかり 通念なるものはみんな変と思う、老人の独語録
61年前の8月15日、戦争の終結が知らされた日の翌日か翌々日、拙者が所属していた班のメンバーである朝鮮国籍の2人の下士官が突然姿を消した。兵営から脱走したのである。日本人の脱走者はいなかった。拙者は乙種幹部候補生のこの2人の手際のよさに感心した。拙者は夕食後の暇な時間に2人のうちの1人の寝場所に赴いて、いろいろ語り合った。話題は政治的、軍事的なものではなく、音楽などに関するものだった。新兵の拙者は軍隊に入る前にしていたような会話の相手を、班内で他に見つけることができなかった。ある古参の上等兵は拙者に朝鮮人にはあまりしゃべらないようにと注意した。彼は拙者が周囲から浮いてしまわないために注意しているのだと言った。世間知らずの拙者としては相手が朝鮮人であることを格別意識していたわけではなく、人間として話しやすかっただけのことであった。 もう一人の下士官とは話し合ったことはなかった。彼のことを忘れ
今から60年と少し前、拙者はある会社に就職しようとしてその会社が指定する医院で健康診断を受けた。30代と思える医師が痩身の拙者をみて、「だらしない生活を送っていることはこのからだを見ただけで分かる。これでは軍隊に入ってもお国の役に立てないぞ。もっとからだを鍛えろ」と、健康診断ならぬ人格診断を行った。拙者は格別だらしない生活を送っていたわけではない。骨細でひ弱な体格は、幼少期以来だ。この時期に母親が甘いおやつを制限なしに与えたので、ひょろひょろになってしまったのだ、と彼女は述懐していた。そのせいで骨細になったのかどうか、本当のところは分からない。いずれにせよ、成年に達した頃になっていくら鍛錬しても、筋肉がつくだけで骨が頑丈になるとは考えにくい。そこで、このひょろ長い体格をすべてだらしない生活のせいにして、拙者を蔑視し、非難する医師に憤りを覚えた。それだけではなく、立派なからだを作るのが本人の
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