(新潮社・上2100円、下1785円) ◇時空を超えた途方もない「踊り」の果てに 「この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんだって、知ってる?」 舞城王太郎の新作『ディスコ探偵水曜日』の冒頭部で出てくるメッセージがこれだ。上下巻合わせて一〇〇〇ページ以上、枚数にして約二〇〇〇枚という桁(けた)外れの大作を、終始動かしているのもそのメッセージである。 決定論と自由意志という問題は、古来哲学者を悩ませてきた難問だった。ただそれは、小説の中に置かれると、因果の連鎖の中で人間がどう生きられるかという問い以上の意味を獲得してしまう。小説という、始まりと終わりがある枠の中で、すべてを作者が仕組んだ舞台の上で、登場人物がいかに行動できるか、ひいては作者も読者もいかに自由を手に入れることができるか、という問題まで一緒に引き連れてしまうことにならざるをえない。 この小説の語り手であり、文字どおり