かつてはお年寄りかオタクの趣味というイメージだった将棋が、いまや大ブームとなっている。その火つけ役があの天才少年の出現だったことは確かだが、日本人お得意の一過性に終わらず、いまもさまざまなメディアで将棋がとりあげられているのは「藤井君だけじゃなく、なんだか将棋って面白い」と多くの人が気づきはじめたからではないだろうか。 そう、将棋は約1000年前にその原型が大陸から伝わって以来、「もっと面白く」を追求して先人たちがつくりあげた、いわば日本人の叡知の結晶である。盤上の勝ち負けにとどまらず盤外にも広がるその面白さが、いまも人々の好奇心を刺激してやまないのだろう。 年初に惜しくも逝去した、実は熱心な将棋ファンでもあった日本を代表する哲学者と、言わずと知れた将棋界のスーパースターが、将棋の「文化」としての面白さを縦横無尽に語り合った対談を、『教養としての将棋』より抜粋してお届けする。 将棋から日本