前回までは、国際収支の動きを中心に日本経済を取り巻く諸問題を考えてきた。こうした議論とも関係する重要問題として、今回は「空洞化」問題を考えてみたい。 危機感高まる空洞化問題 空洞化とは、企業が活動の拠点を国内から海外に移してしまうことにより、国内の経済活動が「カラ」になってしまい、所得や雇用を生み出す力が低下することをいう。この「空洞化」問題がこのところ大いに注目されているのだが、これには2つの背景がありそうだ。 1つは、東日本大震災である。3月の震災は、日本が築き上げてきたサプライチェーン(供給網)が災害というリスクにいかに弱いものかを再認識するきっかけとなった。また、原発事故によって電力不足問題も恒常化する可能性が出てきた。こうした事態の変化を受けて、日本企業が活動拠点を国内から海外にシフトする動きが出てきている。 もう1つは円高である。8月に米国国債の格付けが引き下げられたことをきっ