「男らしさ」に支払う多大な努力とコスト まず、最初に言えるのは、一般的な多数派の男性たちの中にも、被抑圧、脆弱ぜいじゃく性、周縁性などがある、ということである。 近年の男性学では、次のような考え方がなされる(ここでは、多賀太『男らしさの社会学 揺らぐ男のライフコース』世界思想社、2006年、などを参照した)。まず、女性に対して男性は社会構造的に様々な優位にある、という認識がデフォルトとなる(A)。ただし、そこにはいくつかの水準がある(B)。 (B・1)「男性の制度的特権」……集団としての女性の犠牲によって、集団としての男性は、制度的な利益を享受している。 (B・2)「男らしさのコスト」……制度的特権を確保するために、男性たちは、抑圧的な「男らしさ」の規範に従うという多大な努力とコストを支払わねばならない。 (B・3)「男性内の差異と不平等」……男性の中にも様々な立場の人がいて、より少ないコ