ブックマーク / www.city.kobe.lg.jp (10)

  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「最終回 避けた小道」

    細い路地の向こうには日が当たっていて、やわらかい光の中に黒と、ぶちの2匹のが、体をくっつけて昼寝をしている。私は自転車で先を急いでいたのだけれど、視線の先のあまりにも完成された景色に遠慮して、どのような理由があってもそれを壊してはいけないような気がするから、遠回りして別の道を走った。 あたたかい日の午後。数匹の野良が路地の真ん中で堂々と寝そべっている時間帯を私は知っている。その時はこうやって遠回りするんだ。でも、通らなかったという事によってなおさら、私の中には避けた小道の情景がありありと浮かぶ。日が当たっている。身を寄せてが寝ている。近所のおじさんもおばさんも、を避けて歩いている。 久しぶりに銭湯に行った。 今はどこにでもタブレットやスマホを持ち込む生活習慣になっていて、風呂やトイレでも何かを読んだり何かを書いたりしている。布団に入る時でさえもスマホを手放さずに、暗い部屋で電子書籍

    神戸市:ごろごろ、神戸3「最終回 避けた小道」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第17回 神戸鉄火巡礼」

    私には、この世に生まれて来た瞬間の記憶がある。 産声を上げる事も忘れ、外界の眩しさに耐え、 この問題を解決しないと自分は先へ進めないぞと、 出てきたばかりの体をタオルで拭かれながら黙考していたのだ。 それは「ビールに一番合うつまみは何か」という問題である。 あれから四十数年。結局私はどこへも行けないまま、ある日新開地にある老舗酒場『丸萬』のカウンターで大将の包丁さばきをぼんやり眺めていた時に突然体を電流が駆け抜け、答えがわかってしまったのだ。 ビールに一番合うつまみ。それは鉄火巻である。 「大将、てっ鉄火巻ください!」 私は急いでそのように注文し、追加でビールもたのむ。 ここは大将の動きが見える特等席。漬け物をアテに、注いだビールをちびちび飲みながら、海苔にシャリを敷きマグロを隙間なく並べ、巻いた後包丁が音立ててサクッサクッと入る様子を見ながら、 私は知らず知らずのうちに涙を流していた。

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第17回 神戸鉄火巡礼」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第13回 原田通のイーサン・ハント」

    前々から受講したかった灘大学に今季ようやく申し込む事が出来た。さっそく初回の講義では、当地で創業90年になる萩原珈琲さんの歴史を学ぶ。今まで知らなかったのだが、会場である原田資料館の近くには大正13年からの歴史ある和田市場がかつて存在して、萩原珈琲はそこから始まったのだという。会社沿革を見ると当時の所在地は武庫郡西灘村字原田620。質疑応答の時間になるとかつて和田市場に暮らしていたという年輩の方が挙手をされて、先代先々代がいた頃の市場の様子をありありと語っておられた。 なくなった市場について話す。もしかすると、神戸に暮らしている限り、いつか自分もそのような立場になるのかもしれない。そんな事を考えながらの帰り道、駅近くの交差点のあたりで突然、女性の悲鳴が聞こえたのだった。 これは何事かと思い周りを見渡すと、視界に入ったのは犬のリードを持って呆然とする女性と、少し離れた場所にはリードが外れた状

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第13回 原田通のイーサン・ハント」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第23回 「母親」を半分引き受ける」

    初めての立ち飲み屋デビューは確か生後3か月くらいの頃。以来私は抱っこしながらであれベビーカーに乗せながらであれ、ホルモン屋や串かつ屋、寿司屋に焼き肉屋、さまざまな「酒の飲める場所」に子供を連れて行っている。飲みに出かける回数自体は激減してしまったが、子供がいるからといって行動範囲が制限されてしまうのもシャクだなと思い、なるべくどこにでも子連れで行くようにしているのだ。もちろん混雑している時に行くのは他の酔客や私の子供、どちらのためにもならないので避けるが、さいわい近所には朝から開いている酒場がたくさんあるから、すいている時間帯を狙って店の前にベビーカーを横付けし一杯ひっかける。関西特有の気安さか、神戸では赤ちゃん連れで入れる店を探すのに困る事もなく、こんな所に連れてきて…などと言われた事は今まで一度もない。 というような話を先日、その日は灘区の水道筋にある串かつ屋「一燈園」に子供を連れて行

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第23回 「母親」を半分引き受ける」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第5回 視線」

    ショッピングモールや駅や公園などの公共空間で、人目をはばかる事なく大きな声で子供を怒っているお母さんを見かける事がある。そんな時、子供がかわいそうだと非難する気持ちよりも先に、感情が決壊してしまった母親への同情が先に立ってしまい、彼女に対して、今がふんばりどころやからなんとかおだやかに、深呼吸してがんばろうや、などと心の中で声をかけずにはいられない。 理屈だけで言うならば、意のままにならない自分よりも小さな存在に対し声を荒げても仕方がない。しかしそんな事は当人が誰よりもわかっているはずで、ひとりの弱い人間でしかない私たちは時として、自分の感情すらコントロール出来なくなる事がある。育児はどっぷりつかればつかるほど闇と隣り合わせだ。余裕を失ったあのお母さんの追い詰められ方は、我が事のようにきついなと胸が痛む。 十代の頃、東京の山手線に乗っていた時、女装している男性が突然目の前に座っている女性の

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第5回 視線」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第1回 ゴールデンウィークの過ごし方」

    5月の連休は神戸市内各所で様々なイベントが開催されています。いま「市内各所で様々なイベントが開催されています」なんて書きましたが、正直なところ「神戸は観光地だしどこか人の集まる所に行けば何かしらのイベントくらいはやってるんだろう」なんていう適当な気持ちで「市内各所で様々なイベントが開催されています」と書いてしまった事をここに告白します。実際はどこで何をやっているのか全然知りません。 まあ人の多い場所って疲れますし、人の多い場所に行けば犬が小さいので踏まれてしまう。こういう時こそ我々は平野商店街に行くべきではないだろうか。そんな編集会議を経て、ごろごろ神戸取材班は有馬道を登りました。平野というと神戸以外の人には馴染みのない場所だと思うのですが、ひとことで言うと、メインストリートの交差点に松山ケンイチさん……にそっくりな銅像が建っている町。JR神戸駅や高速神戸駅、大倉山駅から徒歩でもバス(7系

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第1回 ゴールデンウィークの過ごし方」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第38回 冬の水族館」

    特に混雑もしておらず、ベビーカーごと気兼ねなく入って行けるために重宝している飲店がある。入口正面はお年寄りでも座りやすいようにと低いカウンター席になっていて、天井近くに置かれたテレビは誰が見るわけでもなくつけっぱなしになっている。しかし私はこの店に相当な回数通っているはずだが、視線を上げればいやでも目につくこのテレビの存在に今までまったく気が付いていなかった。というのも先日初めて一人だけで店に入った時に、ふと視線を上げた先に見慣れない物があったので不思議に思い「このテレビっていつから置いたんですか?」と店主に話しかけてしまったのだ。すぐに空気が気まずくなるのがわかった。店主はこわいものでも見たようにとまどいながら「え、ずっとここにあるけど……」と答える。画面からは退屈な芸能ニュースが流れていた。 私たちは普段外に出ると無意識のうちにさまざまな感覚を駆使して外界を認識しているが、幼児を連れ

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第38回 冬の水族館」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第13回 神戸、安いかき氷特集」

  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第12回 夏とはつまり……(須磨ドルフィンコーストプロジェクト)」

    大人になると、夏は純粋な夏となる。 そう、恋の予感や冒険の予感といった不純物が抜けて、暑さだけが残るのだ。 夏とはつまり、苦痛である。 そんな事を考えながら、テラスでよく冷えたシャンパンを飲んでいると、さっきまで寝ていた子供が私のところにやって来て 「お父さんおはようございます。やはり夏はどこにも行かないのが最上の贅沢ですねえ。今日は冷房の効いた部屋でのんびり過ごす事にしましょうや」 と言ってくれた。私は唇をナプキンで拭きながら 「ありがとう。きみはまだ2歳なのにずいぶん気をつかってくれるじゃないか」 そうお礼を言い、頭をなでてやる。さすが私の子供だ。 夏は冷房の効いた部屋でゴロ寝。冬は暖房の効いた部屋でゴロ寝。 人生の基がよくわかっている。 というような想像をしながら、蒸し暑い部屋の窓を開け、朝起きて挨拶がわりのように泣き叫ぶ子供に冷蔵庫からバナナを1とって与えてやる。子供は笑顔にな

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第12回 夏とはつまり……(須磨ドルフィンコーストプロジェクト)」
    yoyoprofane
    yoyoprofane 2017/07/27
    "「あんぱんまん!!!(訳:オヤジ。イカした夏だぜ。外に出ようじゃないか)」"
  • 神戸市:ユダヤ人と神戸市民の交流に関する資料を探しています

  • 1