生体内の生化学反応は一般的に1秒以下の時間スケールで進みます。そこには、我々生物が生きている時間スケールとは大きな隔たりがあり、生物の中でその溝がどのようにして埋められているのかは、基礎的な問題であるにもかかわらずほとんど分かっていませんでした。この溝を埋めているメカニズムを理解することは、概日時計や睡眠、記憶など、時間が関わるさまざまな生命現象を理解し、制御するためには必須です。そこで、東京大学大学院総合文化研究科の畠山哲央助教、金子邦彦教授は、50年以上前から知られている生体内タンパク質のアロステリック制御のモデルであるMonod-Wyman-Changeuxモデルを、酵素反応を含むモデルへと拡張し、計算機シミュレーションを用いて解析することで、酵素反応のそれぞれの反応がどんなに速くても、全体としての速度が数十万倍以上も遅くなりうることを示しました。さらに、その遅い生命現象の時間スケー