伝熱工学の眼で料理を考えると本当に面白い。 鍋ひとつ取っても、例えば火力によって鍋内面の熱的境界条件が変わるし、火力が同じでも鍋の材質が違えば境界条件も変わる。おそらく銅鍋とかは、温度分布が小さく、均一に加熱できるので、等熱流束条件よりも等温条件に近くなるのかもしれない。ただし、鍋底面と鉛直面では内容物に対する伝熱モードが違うし(自然対流の影響が違う)、内容物に触れていない部分も存在するので、等温とは言い切れないと思う。 鍋の中身が焦げるボーダラインは、鍋・中身界面の温度によって決まる。所与の条件が同じ場合、鍋内面の熱伝達率が小さいほど焦げやすい。鍋内における鍋~内容物間の伝熱は、何もしない場合、自然対流熱伝達が支配的だから、粘性の高い流体(カレーとか)は焦げやすい。絶えずかき混ぜてやれば、伝熱モードは強制対流熱伝達となり、鍋内容物の温度勾配が解消され、鍋底の温度は上がらず、焦げない。 電