半田 章二 はじめに 私の職場がある京都の町には、今年も全国から大学新入生たちがやってきた。夢と希望を胸に、まさに「人生の春」を謳歌しようとする若者たちである。父親や母親に付き添われ、中には方言まじりで語らいながら大学周辺を歩く親子の姿は、春の京都の風物詩とも言える。 「昔は、ここに○○という喫茶店があったんやけどな…」と息子につぶやく父親。きっとこの父親も学生時代を京都でおくったのだろう。少しは土地勘のあることがうかがえる。しかし、記憶とはかなり様相を異にする「学生街」に隔世の感を強くしているようだ――。 確かに1970年代までは、この京都にも、各大学の周辺には学生のための食堂や喫茶店、書店、下宿屋などが立ち並び、そこに学生たちがたむろするという、他の町とは明らかに異なる雰囲気とたたずまいを持った「学生街」がいくつか存在していた。そして、ある種の「特権的」な若者が主体となったライフスタイ