制度的現象にみちあふれる日常経験 まず,以下のような日常的経験の記述から始めてみよう. 身なりを整え,自宅を出て駅へと向う.今日は朝から大事な会議があるのでいつもよりも急いでいる.こんなときは他人の家や畑を横切って近道することが頭がよぎるが,いつも通りに決められた道に沿って歩いていく.自動車が来ないので,交差点の信号は無視してしまおう.どんなに急いでいたとしても,駅には改札口から入っていく以外にない.改札口では,人々が次々とIC カードをタッチして入場している.電光掲示板には電車の発車時刻が示されている.それを見て,間に合いそうだと胸をなで下ろす.大勢の人々がひしめくホームでは,何も考えることなく列の最後尾に並ぶ. 電車に乗ってからは,スマートフォンでメールをチェックしたり,ニュースを読んだりする.少し前までは,電車のなかで携帯電話を操作すること自体が禁止されていた.今では,シルバー・シー