伊丹敬之先生の『平成の経営』を読ませてもらったが、実に楽しかったね。基本的な問題意識を切り口に、産業の変遷をたどる「伊丹研究室シリーズ」が好きで、次々と読み継ぎ、一区切りとなったときは寂しく感じたものだった。新著は、平成の30年間における産業の移ろいを俯瞰するのに最良の一冊だろう。その切り口は「疾風に勁草を知る」である。この間、日本の経営は、何を変え、何を変えなかったのか。 ……… 伊丹先生の指摘する「疾風」とは、低成長と為替変動である。経営は、これらへの対応を強いられたわけだ。平成の間、日本の実質GDPは、米国が1.9倍になったのに、1.4倍にとどまり、世界経済でのプレゼンスは大きく低下した。また、日本の実効為替レートは上昇傾向をたどりつつ、米、独、韓と比べ、大きく振幅した。この二つへの対応が経営の課題だったのであり、答としての海外生産への適応の差が電機と自動車の明暗を分けた。 そもそも