「0.999999・・・ってさあ」 数Aの教科書をじっと眺めていた彼が、振り向いて言った。 「ん、何」 「1 じゃねーだろ」 「1 だよ」 「なんで」 休み時間は残り5 分を切っている。次の授業はヤマケンの英語だった。そろそろ単語テストの "仕込み" をはじめたい。 「だってほら、教科書にそう書いてある」 僕は教科書をひったくって読み上げた。1 を3 で割ると、0.333・・・。それを3 倍すると、0.999・・・。でも、この0.999・・・は1 を3 で割って3 倍しただけだから、結局は最初と同じ、1 に戻る。キューキューキューと連呼する自分がバカみたいに思えた。 「でもさあ」 「ん、何」 「キューキューキューってことはさあ、どこまで行ってもキューが出てくるんだろ?それってキューだから、イチとは違うじゃん」 彼もキューキューと鳴いた。休み時間は残り少ない。 「でも教科書にそう書いてある」
![「0.999999・・・ってさあ」](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b1638cdb5807a4788e4ba3c1109a984166e095fc/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fanond.hatelabo.jp%2Fimages%2Fog-image-1500.gif)