はじめに 以前2回に分けてIQMRサマースクールの体験記(①・②)を執筆したが、今回は、オックスフォードで授業を履修する中で感じ、IQMRに参加してある程度まとまった、政治学の質的方法論に対する私見というか、私なりの理解をまとめたいと思う。もっとも、以下は私の2018年7月時点の認識で、おそらく欠落している視点も多いであろうし、また将来的に同じ考えを維持しているかも不明である。むしろ、今後議論の中で考えを修正、発展させていきたいと思う。 その要諦を先に箇条書きにまとめると、以下のようになる。 ・政治学の質的方法論は、従来、体系化・定式化されないまま研究者の「職人技」「名人芸」によって暗黙のうちに用いられてきた。 ・しかし、量的方法論側からの批判を受けたことで、質的方法論自体を対象とする研究が発展した。 ・そのため初期からのほとんどの研究は、量的方法論と比した場合の質的方法論の独自性とその長