社会学者・小熊英二氏が今年7月に出した新著『日本社会のしくみ』は、日本の雇用のあり方を分析することで、「日本のしくみ」を解明している。なかでもとりわけ興味深いのが、日本社会の根幹にある「正社員」という存在。日本の正社員は一般に考えられているよりはるかに「特殊な身分」だ。なぜ正社員という身分は生まれたのか。そしてこれからその「身分」はどうなっていくのか。小熊氏が語る。 日本ではなぜ「専門性」が重視されないのか ――『日本社会のしくみ』では、日本の雇用慣行の分析が中心に据えられています。なぜ雇用慣行について書こうと思ったのですか? 日本社会の全体像を解き明かすことを目指す過程で、日本の雇用慣行、特に「大企業正社員の雇用慣行」が、教育や福祉なども含めた社会全体のありようを規定していることに気がついたからです。 雇用慣行は社会のベースになっていますが、欧米では労働者の賃金を決める基準は職種ごとの専
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