ミラーハウスってあるじゃないですか。いや、今もあるのかは知らないけれど。遊園地のアトラクションのひとつで、たくさんの鏡が壁のように張り巡らされた迷路の小部屋。 「俺たちに翼はない」という作品は、いうなれば、青春群像という名のミラーハウスに迷い込んだ主人公たちが、己ら自身という鏡に映り込んでくる僕(プレイヤー)と形而上の対話をする、ずいぶん風変わりな"仕掛け"だと思いました。 この作品を好きになれるかどうかは、第一に、鏡に映った自分をどう見るか(そもそも見るのか見ないのか)ということに尽きるのかもしれないなあ。 まずプレイヤーは、主人公という鏡に頭をぶつけるところから始まります。形而上のこととはいえ"痛い"かもしれませんね。でも鏡があること(鏡であること)、鏡を向けていることを彼らは最初に教えてくれ、以降もあらゆる場面・方法・メディアで作品側は――主に人をおちょくったような親しみやすさを