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ブックマーク / sakstyle.hatenadiary.jp (61)

  • 伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 - logical cypher scape2

    なかなかどう感想を言えばいいのか難しい、のは多分この作品があまりに注目を浴びているからだ。 面白かったのは間違いないのだが、じゃあこれが伊藤計劃や円城塔のこれまでのテーマを昇華するような傑作なのかというとそこまで感じなかったのも正直なところなのだけど、一方で一読しただけではちゃんと掴めていないのではないかという疑念がぬぐえず、再読してから考えることにしたい。 とかく、色々なネタが詰め込まれているので、もう一度読み直したいなと思わせるのは確かである。 何やら堅苦しい始まり方になってしまったが、 既に何度か読んでいるプロローグを読み終わり、第一部を開くときの興奮といったら! 伊藤計劃と円城塔という2人の作家が、一般的に似ていると思われているのか、似てないと思われているのかよく分からないけれど、やはりこの2人は似ているのだと思う。 一部で、伊藤と円城の文体が噛み合ってない、円城が色々と無理をして

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    yuiseki 2012/09/03
  • 津原泰水『バレエ・メカニック』 - logical cypher scape2

    まるで今敏の『パプリカ』のような幻視的な風景に満たされた東京を描く第一章から、近未来でARに囲まれながら生きるサイバーパンク的な東京を描く第三章まで、都市となった少女を探して彷徨い歩くトランスヴェスタイトの脳外科医の物語。 二人称で始まる第一章の文章に最初は戸惑うが、じわじわと面白くなっていく。一章が終わる頃にはすっかり引き込まれているはずだが、続く第二章は雰囲気ががらっと変わる。第三章にも同じことがいえ、1つの作品の中で異なる3つのジャンルを味わうことができる。ちなみに、巻末解説で柳下毅一郎は、「華麗なるシュルレアリスム小説としてはじまり、不遜なサイバーパンクSFとして終わる」と書いている。 評判に違わずとても面白かった。 以下、かなりテキトーなあらすじ。筋自体がちょっと錯綜しているのと、今、酒を飲んでぼんやりした頭で書いているので、あらすじの書きっぷりが中途半端。 第一章「バレエ・メカ

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    yuiseki 2012/07/28
  • パオロ・バチガルピ『第六ポンプ』 - logical cypher scape2

    バチガルピ作品の特長は描かれる世界や物語の空気感。一つには、舞台となっている世界の風土的な意味での空気、もう一つには、物語の展開から醸し出される雰囲気という意味での空気。 後者についていうと、以前上田早友里が『ねじきまき少女』をノワールと称していたけれど、それ。バチガルピというと、環境問題とかグローバリゼーションとか言われるし、確かにそうしたモチーフがよく使われているわけだが、そのような、ある種の絶望的な状況に置かれた登場人物たちがどのように振る舞うかという点に、彼の作品の特徴が現れているような気がする。 どれも面白かったけれど、「イエローカードマン」、「第六ポンプ」、「やわらかく」、「フルーテッド・ガールズ」が好き。 以下、あらすじと感想。 ネタバレへの配慮は特になし。 ポケットの中の法 サイバーパンク的な雰囲気のあるデビュー作。 舞台は中国成都。植物のように育つ高層建築を見上げながら、

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    yuiseki 2012/03/12
  • シュルるPによる「ソーシャルパンク(高速ボカロック)」 - logical cypher scape2

    少し前から、シュルるP(シュールレアリスムを正しく理解するP)が、「高速ボカロック」なるものについてちょくちょく書いてるのが気になっていた。 togetterにおいてまとめられているのだが、いくつかあって分散しているので、自分用メモとしてここにまとめておく。まとめのまとめ。 ソーシャルパンク タイトルにある「ソーシャルパンク」は今日のシュルるPのツイートから。 俺の言う高速ボカロックをかっこ良く呼ぶ言葉が欲しい 「ソーシャルパンク」 意味とユニークさから言えば「ソーシャルパンク」しかない気がするけど勢いがないな いやでもこういう、音楽性にはほとんど言及しないようなジャンル名にしておけば何やってもいいことになるからこれでいい気がする ちょっと気に入ってきた。ソーシャルパンクの例が『千桜』、と言えばなかなか直感に合致するのではないかと思う。 https://twitter.com/#!/kn

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    yuiseki 2012/03/01
  • 『SFマガジン2012年2月号』 - logical cypher scape2

    作家特集の4を読んだ。 普通にさくさく読めて、面白かったけど物足りない感じ。 SF設定がすごいというのではなくて、SF設定を背景においてそこから紡ぎ出される物語の叙情の方に重点がある、とでもいえばいいのだろうか。 宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」 資源が枯渇し民族紛争を続ける近未来の南ア。 仲間と強盗をしている少年と、アフリカーナー(南ア生まれの白人)の少女が、紛争を終息させていく話。 彼らが暮らしている街には、放置された少女型アンドロイドの工場があって、落下試験を延々と繰り返している(屋上から少女が降ってくる)。その中の1機と目があう。 時間がとんで、大人になった2人は南アの紛争をとめる重要人物となっている。少女の方は既に死んでいる。 アフリカーナーを救う計画。民族ごとアンドロイドにしてしまう。 あらすじのまとめ方が雑になってしまった……。 前半よかったんだけど、後半が早かった

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    yuiseki 2012/02/25
  • 田中慎弥「共喰い」円城塔「道化師の蝶」 - logical cypher scape2

    久しぶりに雑誌で小説を読んだ感じ。 それだけでなく、文芸誌系小説読むのも久しぶりかな。 読み終わったときの感想引用 芥川賞選評、インタビューならびに受賞作読み終わった。「道化師の蝶」面白かった!! 円城塔読むの久しぶりだったんだが、リーダブリティだったし、最後が「おおっ」って感じだった 選評では、評価する人もしない人も、実験的でわかりにくい作品と捉えていたようだが、一方自分のTLでは、(世界文学とか読んでれば)全然そんなことないだろという意見をちらちら見かけた。 ところで、世界文学なるものを全然読んでない自分からしても、そこまで難しいもんじゃないと思った。噛み砕いて整理しようと思ったら多少めんどくさい感じはするけど。 選評でいえば、川上弘美のものが納得いくもののような気がした。今までの円城作品は「死んでいて生きている」がいるよということまでは言えていたが、この作品でそのの鳴き声まで聞こ

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    yuiseki 2012/02/21
  • 東浩紀『サイバースペースは何故そう呼ばれるか+』 - logical cypher scape2

    「サイバースペースは何故そう呼ばれるか」を河出文庫版で再読。 それから、収録されている論考「精神分析の世紀、情報機械の世紀」「想像界と動物的通路」「スーパーフラットで思弁する」を読んだ。「精神分析の〜」は再読、残り2つは初めて読んだ。対話の章に収録されてるものは既読だったのでパス、また今度読む。あと、特別インタビューと濱野智史による解説を読んだ。 以前読んだときは、結構情報量の多さにいっぱいっぱいになりながら読んだ記憶があったのだが、今回はそうでもなかった。 一応、面白く読むことは出来たのだが(あちこち線引いたりして)、全体的な問題設定とそのための手段の繋がりというのに納得できなくなっていた*1。 ポストモダン論みたいなものへの興味が薄くなっていた。情報量にいっぱいいっぱいにならなかったのも、知識が増えたとかではなくて、そういう部分は少し引いて読んでいたからかもしれない。 近代からポストモ

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    yuiseki 2012/01/21
  • 『背景から考える――聖地・郊外・ミクスドリアリティ』 - logical cypher scape2

    『アニメルカ』に何回かにわけて掲載されてきた、みよじ・はるを・よしたか、tricken、反=アニメ批評による座談会を一冊にまとめたもの。 さらに、『マイマイ新子と千年の魔法』の監督と、『けいおん』の高校のモデルとなった豊郷小学校がある豊郷町産業振興課の方へのインタビュー、さらにはるをさん、trickenさんのそれぞれの論考が加えられている。 豊郷の話は、知らないことが色々あって面白かった。 飛び出しJKはネットで画像見たことあったけど、飛び出し坊や知らなかったし 何より驚いたのは、豊郷が丸紅や伊藤忠商事の創業の地だということ。 座談会は、第一幕、幕間1、第二幕、幕間2、Extra、第三幕の6つのパートに分かれている。 第一幕では基的に、『耳をすませば』が中心に語られる。 聖蹟桜ヶ丘という街についての解説、宮崎作品における郊外の描かれ方と耳すまでの描かれ方の相違。 それから、場所と移動の話

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    yuiseki 2012/01/17
  • ジェグォン・キム『物理世界のなかの心』 - logical cypher scape2

    サブタイトルは「心身問題と心的因果」 徹底した物理主義の立場から書かれた心の哲学の。 実を言えば、心の哲学の中でも心的因果の話はいまいちピンとこないままだったのだが、今更ながら、おー、そういうことなのか、と思ったりw スーパーヴィーニエンスと随伴現象説の関係というのも、今までどうもわかったようなわからなかったような感じだったのが、大分すっきりした。 それから個人的には、「形而上学は避けて通れない」というあたりが、このの中で一番うーんとなったところかもしれない。 遅ればせながら、自分にも形而上学的転回が訪れそうになっているというかなんというか。 今まで自分は、心の哲学に関しては、ここでいわれる「説明実践」の問題として捉えることで色々解決できるのではないだろうか、と思っていた(自分の場合は、心的因果よりもハードプロブレムの方についての関心が主だっているけれど)。 しかし、ここでキムは、「説

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    yuiseki 2011/12/04
  • グレッグ・イーガン『プランク・ダイブ』 - logical cypher scape2

    イーガンといえばアイデンティティSFといったイメージがあるが、訳者あとがきや解説にもハードSF寄りの短編集とあるように、むしろ数学や物理学をテーマとした、あるいは宇宙を舞台にしたSFが多い短編集だった。もちろん、今まで刊行されたイーガン作品でも数学は頻繁に登場していたし、宇宙を舞台にした長編もあるので、決して意外ではない。イーガン作品を既に多く読んでいる人には楽しめる短編集だと思うが、イーガンはまだあまり読んだことないという人には必ずしもお勧めしないかも。 以下、各編のあらすじと感想。あらすじは結末まで触れているので、未読の人は一応注意。 クリスタルの夜 仮想空間の中に人工生命を走らせて、人為的に進化させることで、知性、ひいては人類よりさらに発達した知能を作ろうとする富豪の話。 ある程度まで知性を手に入れた段階で、こちらの物理世界に干渉できるようなデバイスを与えて、仮想空間外の物理学も学ば

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    yuiseki 2011/10/11
  • ウィリアム・ギブスン『クローム襲撃』 - logical cypher scape2

    実はサイバーパンク小説はあまり読んだことがないのだけれど、わりとすらすら読める、というかイメージがわきやすい 懐かしいというと語弊があるが、古いとは思うけれど馴染みのあるイメージのような気がする。これより古いSFになると、イメージしにくいということは必ずしもないけれど、やはり昔のものだなあという感じを受ける。 あと、SFアイデア勝負じゃないところが、ガジェットが古くなってしまったとしても、読んでいて心惹かれる点なのかもしれない。それでいて、SF的要素が背景に沈んでしまわない。 記憶屋ジョニイ これをちょうど1年前にSFマガジンで読んだ。 それがきっかけで(というのには間が空きすぎだけど)、このを手に取ることになった。 『SFマガジン2010年1月号』 - logical cypher scape イルカとかルビとか ガーンズバック連続体 建築カメラマンの主人公が、ありえたかもしれない未来

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    yuiseki 2011/01/08
  • 『ゼロ年代日本SFベスト集成<F> 逃げゆく物語の話』大森望編 - logical cypher scape2

    『ゼロ年代日SFベスト集成<S> ぼくの、マシン』大森望編 - logical cypher scapeに引き続き こちらは、死にまつわる話が多かったように思える。 個人的な話だけど、最近時々ふとした拍子に死の恐怖に襲われたりして辛い。念のため、別に病気だったりなんだったりするわけではない。ただ、なんか唐突に、自分もいつか必ず死ぬということに気付いてしまった。ウフコックはそのことに気付いて生を知ったらしいが。 以下、各編のあらすじ。基的に自分の備忘録なので、ネタバレしまくり。 恩田陸「夕飯は七時」 <すこし、ふしぎ>短編 幼い兄妹は、知らぬ単語を聞くと、頭の中に思い浮かんだイメージが具現化してしまう体質。胡椒をふりかけくしゃみをすると、具現化したものは消えるので、かろうじて周囲の人には知られずに過ごしている。 三崎亜記「彼女の痕跡展」 恋人がいた記憶がないのに、恋人を失ったという感覚に

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    yuiseki 2010/12/23
  • ゼロ年代SF100(大森望編) - logical cypher scape2

    こういうのがあると、ついついチェックしたくなるねw 「ゼロ年代SF100」(大森望選) - 大森望 大森選の常ながら、これはSFなのか、というのも入っている。あと海外は、発表はゼロ年代じゃないんじゃないってのも混ざってるようだ。 さて、自分は一体何冊くらい読んでいるのだろうか。 しかしこういうことやると、「おまえ、そんなのも読んでなかったのかよ」というのが露呈してしまう諸刃の剣w ■国内SF 秋山瑞人『の地球儀』電撃文庫 秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』電撃文庫 いきなり露呈してしまうが、秋山を実は未読なんです 東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』新潮社 読んだ。 雑誌連載の『ファントム、クォンタム』の時から読んでますよw というか、雑誌で読んでいた時の方がちゃんと感想を書いていて、単行で読んだ時の感想が全然書けてない。単行で読んだ時、こっちの調子が悪かったせいでちゃんと読めなかった

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    yuiseki 2010/11/27
  • 冲方丁『ばいばい、アース』 - logical cypher scape2

    冲方丁のデビュー後第一作、なのだがそれがあまりにもでかくて高いだったので、当時は一部を除いて見向きもされなかった、らしい。現在は、角川文庫から4分冊で出ているが、最初はハードカバー上下二段組み、あわせて6090円だったらしい。スニーカー文庫にすると7,8冊分だとか。*1 長かった、というのが実に第一の感想で、これはどちらかというと、ラノベみたく数ヶ月に一冊でるペースで読んでいくのがよかったのかもしれない、とも思った。 いわゆる「剣と魔法のファンタジー」であるが、SFとしての仕掛けも用意されている。 単語やルビの使い方、キャラクターや世界設定は、ラノベ的な「剣と魔法のファンタジー」ものなのだが、その密度たるや凡百のラノベの追随を許さない、というかもはやあんまり「ライト」ではないw というわけで、読み応えはある。 のだが、他の冲方作品と比べると、デビュー後第一作ということもあってか、劣る

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    yuiseki 2010/11/05
  • 哲学的な萌えをみんなで作ろうぜみたいな企画があるそうです - logical cypher scape2

    哲学的な何か、あと科学とかの飲茶さんが、http://tetugakunovel.sakura.ne.jp/index.htmlというのを始めたそうで、その宣伝です。 なんでお前が飲茶さんの宣伝してんの? って話ですが、急に飲茶さんからmixiメッセージが来たので。 いや、僕もびっくりしました。ブログやってると時々こういうことがありますね 「史上初!「萌え」と「哲学」の融合」ということで、哲学ヒロインを主人公にした短編小説を書いて投稿してくれーって企画らしいです 企画の趣旨としては、新しい萌えジャンルの発掘ということで、「哲学」の方はあんまり厳密に捉えなくていいそうです。 小難しいことを話すヒロインってありじゃねってことらしい*1。 詳しいことは、「哲学的な彼女」企画http://tetugakunovel.sakura.ne.jpを見よ この時期の定番ネタになりつつある? 飲茶さんが僕に

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    yuiseki 2010/09/16
  • ジェラルド・M・エーデルマン『脳は空より広いか』 - logical cypher scape2

    脳神経科学者エーデルマンによる、「意識」についての研究の一般向け啓蒙書。 基的には、全くその通りだよなあと思いつつ読んだけれども、うむむまだよくわからんなーという部分もあった。 とりあえず、まずはの内容をざっと紹介。 意識について エーデルマンは意識の特徴として、主観的であること、統合されていながら、かつ変化していくことなどを挙げている。 特に重視しているのが、統合されながら変化していくということである。 意識は、様々な要素が合わさって単一のシーンとして構成されている。目に見えている様々な感覚やら感情やら何やら。そしてその中から要素だけを取り出そうとするのはほとんど不可能(例えば、クオリアについて、「赤」のクオリアなどといって、あたかもそれだけ単独で取り出せるかのように語られることがあるが、それを否定している)*1。そのように統合されながらも、時間的推移にともなって次々と変化していくも

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    yuiseki 2009/12/11
  • 長谷敏司『あなたのための物語』 - logical cypher scape2

    タイトルはテッド・チャンっぽくて、設定はイーガンっぽくて、病や死といった身体性をテーマにするあたりが伊藤計劃っぽいとなれば、そりゃもう読むしかないw とはいえ、読んでみての感想は、(ある意味当たり前だけど)そのどれでもない感じである。というか、正直なところ感想を書くのが難しい。 『あなたのための物語』を評価するのは結構僕自身は両義的である。「純文学」としては文章や描写が殺伐としている。「エンターテイメント」としては、展開などがフラットすぎる。しかしそのフラットさが、作中にもある「平板化」とあわせて、ある意味を持っているところが、評価の迷うところ。 http://d.hatena.ne.jp/naoya_fujita/20091028/1256730069 これは、id:naoya_fujitaの感想だが、確かに文章の上でもストーリーの上でも、言ってしまえば退屈なところがある*1。余命半年を

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    yuiseki 2009/11/19
    >人格というものを、人間という特権的な存在者とさせている根拠は、「死」だよね
  • 冲方丁『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』 - logical cypher scape2

    何でこれを今まで読んでなかったんだ、自分! と後悔すると共に、何はともあれ完結する前に追いつくことができて良かったと思う。 ラノベの到達点 『ガンスリンガーガール』と『虐殺器官』を足して、さらに「キャラクター」を掛け合わせてブーストしたような感じの小説 設定や物語のレベルでも色々と面白いのだけど、加えて文体レベルでも、ラノベの到達点というか、キャラクター小説の文体として一つ突き詰めてみせたようなところがあって、面白い。 筑波批評で高橋さんが論じていたスケールの問題をちょっと考えていたり。 戦闘級ないし戦術級の問題と戦略級の問題はいかにつながるのか。セカイ系はそこが短絡しているわけだけど、シュピーゲルシリーズは戦術面においてベストを尽くせば戦略面での活路が開けるというような展開なのかなあと思う。藤田さんがいうところの、ひぐらしとか雷撃SSガールとかの流れとも繋がったりするのかなあと思ったり思

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    yuiseki 2009/09/05
  • サブカルチャーとかカルチュラルスタディーズとか - logical cypher scape2

    今日は、集中授業で学校行ってた。 内容は、戦後アメリカ文化論とでもいえばいいか。 それで50年代後半くらいからの若者のカウンターカルチャーの話になった。 簡単にまとめれば、 大人たちの作ったものを如何にアプロプリエーション(換骨奪胎)するか、というのがカウンターカルチャー。 最初は大人が大人のためにつくったもの(自動車、ドライブイン、カーラジオ、ジャズ、ブルース)を、大人の想定しなかった使い方をする若者たち*1。 何でこんなことを書くかというと、最近読んだブログを思い出したから。 TBSのラジオ番組で、社会学者の鈴木謙介がパーソナリティを務めている「文科系トークラジオ Life」ってのがあって、僕はいつもpodcastを利用して聞いているのだけれど、前回の「若者文化」についての話は面白かった。特筆すべきは前半部分で、要約すると、「若者文化」と一口に言っても、それは文化を消費する側=消費者と

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    yuiseki 2009/07/18
  • スーザン・ブラックモア『「意識」を語る』 - logical cypher scape2

    哲学者、心理学者、神経科学者などなどの「意識」研究者へのインタビュー集。 著者のスーザン・ブラックモアは、『ミーム・マシンとしての私』の著者。僕は、このタイトルと名前しか知らなかったので、てっきり生物学者か何かだと思っていたので、訳者解説を読んで驚いた。この人、超心理学、つまり超能力の研究で博士号を取ったらしい。しかもこの人、自分には自由意志はないと公言して憚らないすごい人でもある。 とはいえ、書における彼女は別にそんなとんでもない人ではなくて、とても分かりやすく深いところまで切り込んでくれる。彼女と研究者たちの打ち解けた対話から、彼らの音まで伝わってくるようだ。彼女は、彼らの理論について尋ねるばかりではなく、「死後の世界はあるかどうか」といった質問や、「あなたの研究はあなたやあなたの生き方を変えたか」といった質問を投げかけて、単なる彼らの解説に終わらない言葉を引き出すことに成功してい

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    yuiseki 2009/04/23