関志雄 Chi Hung KWAN (C. H. Kwan) コンサルティングフェロー 株式会社野村資本市場研究所 シニアフェロー 「中国経済新論」開設にあたり プロフィール
20世紀80年代の頃、中国のハイテク産業は基本的に生産型で、研究開発と流通に関する役割が果たせませんでした。当時大手企業の技術は、主に技術導入に頼っていました。80年代後半から、政府はようやく技術の社会進歩を促進する役割を意識し始めました。このように、80年代におけるハイテクの発展を促進するために、以下のような政策が制定されました。すなわち、国立研究院、大学に所属する研究所に対する支持を減少させ、いわゆる「鉄飯碗」を破ること。ハイテク開発区を設立すること。国家科技計画を制定すること。外国の資金を有効に利用すること。地方政府の行政機能を発揮させることです。 中国のハイテク産業の発展の経緯をまとめてみますと、80年代以後、科学技術者達の間で、市場に向けての自己創業の意識が次第に高くなってきました。そこで、ハイテクパークのシステムを活かすようにし、政府の一貫とした管理体制も変わりました。さらに中
市場経済化に伴う中国経済の台頭は著しい。2001年のWTO加盟によって、国内経済改革の動きはいっそう加速し、安価な製造コストを求めた生産拠点としてではなく、巨大なマーケットをにらんだ先進諸国の対中進出が活発化している。1990年代からの対外経済開放政策によって外資導入とともに、市場原理に従って国有企業改革を進め、中国政府は国内産業の競争力強化にも力を入れている。その重要な政策の一部がイノベーションシステム改革の動きである。 イノベーションシステムとは、企業における新製品開発や新たな生産技術の導入などのイノベーションを活性化させる国全体のシステムを示す。たとえば、大学や公的研究機関における研究成果が企業におけるイノベーションに対して、いかに有効に取り入れられるかといった産官学連携のあり方も重要な要素である。また、シリコンバレーにみられるようなベンチャー企業によるイノベーション創出を促進するた
中国では、「産学官連携」のことを「産学研合作」と呼ぶ。「官」ではなく「研」となっているのは、中国科学院といった公的研究機関が大きな役割を担っているからである。この「産学研合作」推進の10周年にあたる昨年、北京の清華大学で記念シンポジュームが開催された。 改革解放以前の中国では、研究開発は主に公的研究機関や大学が担っていたため、科学技術の産業化を担う「産」の研究開発能力の育成が改革の出発点であった。国有企業の改革が遅れる中で、新たな「産」の担い手として注目を集めているのが民営科技企業とよばれるスタートアップである。大学や公的研究機関は、自ら企業を設立することで、TLOのようなやり方では難しい「産」への技術移転を直接行ってきた。「大学発ベンチャー」(校弁企業)はこのような中国固有のイノベーション・システムの中で生まれ、中国市場の拡大とともに大きな発展を遂げてきた。
中国はITやバイオといった先端技術分野での研究開発を重点的に押し進めている。これまでの計画経済下における制度の改革を断行し、研究機関の整理や海外から呼び戻した研究者を中心に、研究成果の産業化も視野に入れた研究重点化を図っている。研究予算など限られた資源のなかで、中国の全般的な科学技術が先進国と肩を並べるにはまだ時間はかかるが、ソフトウェアや稲ゲノムなど、海外との知識ネットワークを生かしたいくつかの突出した分野で急速なキャッチアップが行われている。 そうしたなかで、変化する中国を絶好の機会としてとらえている欧米諸国は、大規模で長期的な研究交流プロジェクトを展開し、存在感を高めている。世界的な「知識経済」の台頭は、研究開発分野のグローバル化を意味する。日本にとっても、生命科学や環境問題など主要な科学技術分野での中国との連携は、2国間の問題だけではなく、アジア地域を越えた世界的な重要性を持ってい
多くのグローバル企業がR&D活動をアジア新興諸国に展開している。なかでもインド・中国への関心が特に高い。2004年に行われたEconomist Intelligence Unitの調査では、今日のR&Dホットスポットとして中国、インドが米国と並んで筆頭に挙げられている。また、McKinsey & Company, Inc.が2004年に世界企業の上級管理職対象に行った調査では、欧米企業の上級管理職の間ではR&D投資先としてインドの評価が高いのに対し、アジア太平洋地域の企業に限定すると逆に中国人気が上回っている。概して欧米企業の方が日本企業よりもインド・中国での高度な研究開発活動の展開に意欲的だ。 先進国のR&D投資が多いのはインドではIT、通信、自動車、医薬品・バイオなどの業種、中国ではPC、通信業界を中心に化学、石油化学、医薬品・バイオ、自動車、輸送などの業種である。また、投資企業の国籍
「平沼プラン」に続いて「遠山プラン」と、真の「科学技術創造立国・日本」の確立を目指し抜本的な改革を盛りこんだ政府案がこのところ相次いで発表されている。中でも今、最も注目されているのが「大学発ベンチャー」の育成である。これまでこうした産学連携のモデルとしては、米国カリフォルニアのシリコンバレーが取り上げられてきた。しかし、実際には米国のシリコンバレーは自然発生的に出来上がったもので、今日本で考えられている政府主導の改革モデルとは社会的背景が根本的に異なる。一方、中国では、過去20年間にわたり政府が積極的に中国版シリコンバレー建設に携わっており、むしろ日本にとって彼らの改革の経験に着目する意義は大きい。 また中国は最近、これまでインフラ整備に重点を置いてきたサイエンス・パーク発展計画から海外にいる中国人研究者を呼び戻すような政策を積極的に導入するなど、ハード面のみならず人的資源の問題を真っ向か
中国では、今IT産業を中心とした新しいハイテク産業が目まぐるしい勢いで発展しており、日本でも大きな関心が寄せられている。なかでも、北京市北西部に広がる中関村は「中国のシリコンバレー」として世界の注目を集めている。この地域には、中国を代表する北京大学や清華大学といった30以上の大学と中国科学院など200を超える研究機関が集まっており、これらの大学や研究機関からスピンオフした企業も数多く存在している。改革開放から20年、中関村は今や中国の技術革新システムの象徴である。 それ以前の中国は、旧ソ連をモデルとした中央集権型システムにより、国防関係や重工業の発展に関連する科学技術を中心に研究開発を行ってきた。このような国家主導体制においては、民間ではなく国務院の研究機関などが主な研究開発の担い手であった。しかし、改革開放に踏み出した中国政府は、それまでの非効率な研究開発体制を問題視し、旧ソ連型のイノベ
日中関係を考えるときに中国脅威論に象徴されるように、競合的になっているという見方が急速に浮上していますが、私は現在はもちろん、当分の間、日中は補完関係にあると言っていいのではないかと思います。競合関係がゼロサムゲームだとすると、補完関係は一種のウィンウィンゲームになるはずです。従って、問題はむしろこの補完関係がなぜ、活かされていないのか、というところにあると思います。 (図2参照)横軸には右にいくほど半導体などのハイテク製品、左を靴下などのローテク製品、真ん中にテレビなどの製品というように輸出品目の付加価値指標を、縦軸には金額をおくと、日本の輸出全体がひとつの山で、中国とは別の山として描くことができます。金額が大きいのは輸出規模が大きく、右に偏っているほどハイテク産業が中心ということで産業構造が進んでいる、としていいと思います。現状では、中国の輸出規模は日本の6割程度で日本の山の方が大きく
原山 優子 (RIETIファカルティフェロー/東北大学教授)/ 角南 篤 (RIETI研究員/東京大学先端科学技術研究センター客員研究員)/ 藤本 昌代 (RIETIファカルティフェロー/同志社大学講師)/ 中村 吉明 (経済産業省関東経済産業局総務課長)/ 和賀 三和子 (米国GETIマネージングディレクター/産業技術総合研究所客員研究員)/ 星野 友 (東京工業大学生命理工学研究科修士課程) 原山 優子 (RIETIファカルティフェロー/東北大学教授) この4月に、RIETIの経済政策レビューシリーズの1つとして、「産学連携」(東洋経済新報社)という本を出しました。現時点の日本では、「産学連携」はキーワードとなっています。キーワードから進んで、今やスローガンになっているのではないかとさえ、思えます。 産学連携推進は政策課題となり、法的整備、施策がかなり進んできました。この動きは、もう地
「モジュール化」は、1990年代後半から、経済学・経営学の最前線でのホットなテーマになっています。 分業が利益をもたらすという考え方は、アダム・スミスの頃からありました。これは、いわば「効率化のための分業」で、複雑な作業を分割して、無駄を出来るだけ削ぎ落として原価低減により利益を上げるという、マイナス指向のものです。ところがICT技術が発達して、ディジタルで綺麗にインターフェースをかけるようになると、新しいかたちの分業が生まれてきました。それは、大企業内部の閉じた中央研究所のみならず、中小ベンチャー企業が生み出す最先端技術のオプション(選択肢)をオープンに「組み合わせる」こと(mix & match)で、莫大な新しい価値(オプション・バリュー)を創造するプラス指向の「進化のための分業」です。モジュール化経済でのキーワードは、イノベーション(価値創造)とスピードの競争です。 「モジュール化」
「モジュール化」は、現在、経済学や経営学の専門家の間で最もホットなテーマの1つ 世界経済の発展を牽引するシリコンバレー。多数のベンチャー企業が日夜激しいイノベーションを繰り広げるシリコンバレーの本質は何か。これに「モジュール化」「カプセル化」あるいは「情報を隠すこと」と即座に答えられる方は、本書を読む必要はないでしょう。 「モジュール化」は、現在、経済学や経営学の専門家の間で最もホットなテーマの1つで、既存の産業や企業の構造を根本的に覆しかねない極めてインパクトの強いものです。本書は、「モジュール化」が持つ力について、やさしく解説しています。 90年代は、アメリカのベンチャーが世界的隆盛を誇り、それまで世界経済の主役だった日本の産業が「失われた10年」を無為に過ごした時代と言われます。アメリカのベンチャー隆盛を読み解くキーワードが実は、「モジュール化」なのです。「モジュール化」とは、字面で
「e-Life Blog」は、経済産業省商務情報政策局と、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)が共同で実施する、ウェブログ技術を用いた産業界及び有識者、一般ユーザとの対話実験です。 具体的なテーマとして、現在注目されている情報家電産業を取り上げることとし、商務情報政策局が公表した政策ペーパ「情報家電産業の収益力強化に向けた道筋」をベースに議論を進めていきます。この政策ペーパの執筆者がそれぞれウェブログを開設し、内容についての解説や、寄せられた意見に対しての回答を通じた議論を展開していきます。 このペーパは、昨今注目を浴びている我が国の情報家電産業について、その強みと弱点を分析し、政策担当者自らが政策上の諸問題を抽出したもので、RIETIにおいて合同ワークショップを開催し、そこでの議論を踏まえたものとなっています。 尚、本プロジェクトは3カ月間の期間限定で実施し、寄せられた意見・情報を踏
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