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ブックマーク / chez-nous.typepad.jp (8)

  • 日本学術会議のこと(2)

    昨日の記事について、たくさん質問をいただきました。全部に答えるのは無理だけど、いくつか。 ◯ まず、お前は誰だ?(笑) 的な質問。 ちょっと失礼だけど、まあいい。 このブログは「hirunenotanuki」という名前で動かしてきましたが、別にアイデンティティを隠しているわけではありません。過去の記事を見れば分かります。 日学術会議の会員ならエラい先生なのだろうと思う人もいるかもしれませんが、実は学問的にたいした業績も貢献もありません。別に謙遜して言ってるのではない。ただ京都大学で美学の教授を10年くらいつとめ、この4年間は美学会の会長をしてきて、歳も相応にとってきたので推薦を受けたのではないか。 ◯ 次に、あなたも左翼なのか? というような質問。 違います。たしかにぼくは若い頃テオドール・アドルノやユルゲン・ハーバーマスを読んでいて、その意味ではフランクフルト学派つまり新左翼の哲学を勉

    yuiseki
    yuiseki 2020/10/04
  • 日本学術会議のこと

    これはポンポコ先生じゃなく「中の人」? が書いています。どこが違うのだと言われると困るのだけど。 すでにいくつかのメディアで報道されているように、日学術会議が推薦した第25期の新たな会員のうち、人文・社会系35名のうち6名が、内閣総理大臣によって任命されなかったという事態が起こりました。 ぼくは新会員のひとりであり、昨日の総会に出席しました。前会長の山極寿一さんが退任挨拶の冒頭で、経緯について簡単に説明しました。新会員の名簿は何ヶ月も前から内閣府に提出されていたのに、一部を任命しない事実が知らされたのはわずか2日前だったとのことです。つまりこの決定について現会員や執行部に抗議する時間的余裕を与えない、ギリギリのタイミングで知らされたということです。 こうしたことは、日学術会議の発足以来初めてのことです。過去においても政府と学術会議が対立したことはありましたが、任命者である総理大臣が会員

    yuiseki
    yuiseki 2020/10/04
  • 高校生のための美学入門 2016

    今日の午前中、こころの未来研究センターに来てくれた福岡県立明善高校の一年生の皆さん60名あまりに講義をしました。以下に、そのために書いたテキストを掲載します。実際の講義では、時間の制約もあり全部の話題には触れられなかったので、明善高校の皆さんにもこのブログを参照するようにお知らせする予定です。 --------------------------------------- 「スーパーサイエンスハイスクール」というプログラムの一環として、皆さんは一昨日から、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」を見学したり、京都大学のiPS細胞研究について話を聞いてきたということですが、いわゆる科学研究の「最先端」を目の当たりにした感想はどうでしょうか? びっくりしましたか? それとも、アニメやゲームなどの「物語」の中では、もっとすごいことがいくらでも実現されているので、正直それほどショックは受けなかった

    高校生のための美学入門 2016
  • 表現の自由

    表現の自由を口にするとき、私たちはすべてフランス人である。 ここで言うフランス人とは現実の一国民のことではなくて、啓蒙の急進主義を極端にまで押し進めそれを突き抜けてしまおうとする精神、それを突き抜けることで新しい共同体を作ることを信じる人々という意味である。この意味では現実のフランス国民の多くはフランス人ではない。 表現の自由とは、単にどこかにあったりなかったりする何かではなく、またある国では許されているが別な国では禁じられているような何かでもなく、誰にとっても、常に今ここにあるひとつの課題として存在する。 誰でも自分が心から崇敬する対象が揶揄され、からかいの対象になることは不愉快である。現代人の多くは「ポリティカリィー・コレクト(政治的に適切)」なので、他者の信念や信仰を尊重するからというよりも、たんに厄介な問題に巻き込まれたくないという理由から、そうした振るまいを避ける。 でもフランス

    yuiseki
    yuiseki 2015/01/12
  • 世界の圧倒的な虚しさ

    高校1年生の女子生徒が、何の恨みも憎しみもなく、ただ人を殺してみたかったという動機から、クラスメートの女子を殺害し、その遺体を解体しようとしたらしい——この衝撃的な事件について、いったいどのように考えればいいのか、どんなことでもいいから何か書いてくださいと若い人たちから頼まれたのだが、いったい自分に何が言えるのか…とにかく書いてみることにする。 とりあえず、自分自身が高校1年生であった1974年のことを思い出してみる。その4年前に市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた三島由紀夫の作品は、文学好きな高校生の間でよく読まれていた。ぼくも高校1年生の夏休み、まだエアコンのなかった家の暑さを逃れて藤森神社の木陰に逃げ込み、聴覚を麻痺させるような蝉時雨の中で、白地に赤い文字で作者と作品名がデザインされた新潮文庫の『午後の曳航』を読んだ。 この記憶について言うのは、佐世保の事件のことを聞いて、まずこの

    yuiseki
    yuiseki 2014/07/31
  • なんでもないことの幸せ

    2008年の5月、京大での記号学会大会がきっかけで書いた文章です。先日IAMASでの元教え子からコミックス作品をもらって、あらためてBLについて考えていることがあり、読み直してみました。でも下のような考察だけでは不十分だし、これはBL論というより少女マンガ論なので、もう少し考えを進める必要がある。9月の国際記号学会のラウンドテーブルで報告するつもりです。 -------------------------------------------------------------------------------- 「BL(ボーイズラブ)」と総称される小説やマンガが、ここ約十年くらいの間、女性読者向け書籍売場においてめざましい快進撃を続けてきた。今やちょっと大きな書店に行くと、長い書架の二面あるいはそれ以上がすべてこのジャンルの読み物で満たされており、すこぶる壮観である。BLというのは、様々

  • 同性愛は自然である

    ぼくは、同性愛をアブノーマルだと考えていない。それは人道的な理由からでも、性的マイノリティの人権を護るべきだという動機からでもない。たんに同性愛は自然なことだからである。というより、「同性愛」「異性愛」「性的マイノリティ」といった分け方は、人間がいわば無理やり自然に押し付けたカテゴリーであり、自然界にはそれに対応するような現象は存在しない。自然界にはただ、多種多様な性的関係があるだけなのである。ぼくの考えは、この端的な事実に基づく。「同性愛」という言葉も、便宜上しかたなく使っているにすぎない。 「同性愛」と呼ぶことのできる現象は、動物界には広くみられる。最近の研究では、鳥類やほ乳類などを中心に1500にも及ぶ種において、生殖に結びつかない性関係が観察されている。異常でも何でもない。「同性愛」は自然なのである。もちろん「異性愛」も自然である。自然でないのは、「セックスは子孫を残すための行為だ

  • 実存主義のアクチュアリティ

    もう去年のことになってしまったが、12月25日から28日までの4日間、横浜国立大学の室井尚さんがオーガナイズしている「横浜都市創造ラボ」のプログラムとして、「実存主義のアクチュアリティ」という集中講義を行った。これは横浜国立大学の授業でもあるのだが、一般公開もされており、遠方からはるばる聴講に来てくれた多くの方々に、心から感謝したい。 なんで今「実存主義」なんですか?という質問を、事前にも何人かの学生たちから受けた。実存主義が「アクチュアル」であるとはどういうことか?、と。まじめに哲学史の講義を期待していた人たちには当にもうしわけないが、実は哲学史・思想史上の実存主義なんて、ぼくはどうでもよかったのである。 実存主義は、とりわけジャンポール・サルトルの名前と結びついており、ようするにあのジャンポールが、自分の立場を西欧近代哲学の中で位置づけるために、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガーを自

    yuiseki
    yuiseki 2013/01/08
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