兄から被害 愛情と希望失った 体に張り付いて、はがしたいのに、はがせない――。 5歳の時から15歳まで、兄から性被害を受け続けた良子さん(仮名)(66)は、半世紀を経た今も消せない記憶を、そう表現する。ふとしたことで、あの忌まわしい時がよみがえり、心の傷が痛み、肌があわ立つ。 「私には青春はなかった。夫さえ信じ切ることができない。川の流れのように、記憶も流せたらいいのに」 終戦後の混乱期、大家族の末っ子として育った。食べていくのに精いっぱいの家庭で、勉強のできた15歳上の兄は、両親の自慢だった。 初めて被害に遭ったのは、5歳の冬の夜。ふすまがスーッと開き、兄が布団に入ってきた。下半身を触られたが、何をされているのか理解できない。ただ怖くて、声も出なかった。 以来、母が内職で夜なべしているスキを見計らっては、忍び寄ってきた。熱を出して家で一人で寝ているところを狙われたこともある。 兄は「黙っ