「島の死生観が感じられる場所です」と、自転車を借りたときにもらったパンフレットに書いてあったので、日が落ちる前に行っておこうとペダルを踏んだ。なかば義務感だった。 この島に来る船で飲んだ酔い止めで逆に体調を崩し、着くなり半日寝こんでしまってからというもの、なにもかも調子がおかしい。日本最西端、本当のさいはての島は奇岩奇勝で知られているが、それはつまり日本にはじめてたどり着く黒潮がどこまでも荒く打ち寄せ、人頭税の負担から逃れるために妊婦を飛ばせたという断崖絶壁が高くそびえる、とても厳しい土地だった。前にいた島の夕暮れの湾の長閑さ、潮の退いた砂地にしゃがんで息を殺して感じたシオマネキやハゼやガザミの無数の気配がとても懐かしく感じられた。 帰りの船はあとふたつ寝ないと来ないが、まだ民宿には戻りたくない。布団は毎日律儀に三つ畳みに直されているが、特にシーツを替えているわけではない。それはいいとして