禅僧の言葉(5)《禅とは掃き清めること》 アップルを石もて追われたジョブズは、時代の寵児から一気に坂を転げ落ちた。時に1985年、ジョブズ30歳。道を失いかけた彼は、禅の師、弘文を追い求めた。たとえば、追放の翌年。なんとジョブズは、弘文の里帰りに同行し、新潟の小さな街、加茂にまで足を伸ばしている。 一方、この頃、弘文自身は、ニューメキシコ州サンタフェ近くの山岳地で、一種の隠遁生活を始めていた。もちろん、ジョブズはここにも現れている。人里離れた山奥まで師を追った弟子に、師は説いた。 みんなは、禅を瞑想だと思っている。でも、そうじゃない。禅とは掃き清めることなんだ。 実はこれ、かの有名な『般若心経』の〈色即是空(しきそくぜくう)〉に繋がる言葉である。 色(しき)はすなわちこれ空(くう) ここでの〈色〉は、あらゆる物質要素を指す。〈色〉であるところの物質要素は〈空〉。平たくいうと、物質とは実体の